★第四章★ 決意(4)

 一帯のクーヴァが断末魔と共に崩れ、消滅する。

「やっぱりボクの思った通り――いやそれ以上だ」

 数日前にグレイが法器にインストールした魔法術式の威力に、改めてシホは息を呑む。

「凄いよグレイ! こんな戦い方ができるなんて!」

「魔法自体はそれほど大したものじゃないよ。法器を自在に操れるシホのテクニックあってこそさ」

 これなら一気に多数のクーヴァを撃破でき、仕事の効率もあがる。

 ……そして。きっとトリッキーな動きを得意とするミーティアでも完全に対応することは出来ないハズだ。

 来たるべき対決で、必ず役に立つ……!! シホは確かな手応えを感じていた。

 成果を見届けたシホは地上に降り立つ。つい先程まで、シホを取り囲むほどいたクーヴァはすっかり消え失せている。

 クーヴァから逃れた依頼人はもうどこかに行ってしまったか。しかし――無事に願いは叶ったようだ。法器の先端に光の粒子が集い――ヘクセリウムと化す。

「あっ……」

 シホがその輝石を取り落とし、地面に転がる。

 半身以上を失い、消えかかっていたクーヴァがヘクセリウムへと這いずり寄るが――

 ――ぐしゃり

 面倒そうにシホが頭を踏みつぶす。獣は黒い霧となって消えた。

 …………

 やや離れた空から、シホを見つめる者たちがいた。

「ヴィエラ……本当にこのままで……いいんですの?」

「確かにシホは強くなった。けどな……何か――遠くなっちまったな……」

 そして、もう一人。

「これハ――面倒なことになってきたわネ……」

 高圧線の走る鉄塔の上でそう一人ごち、メテオラは闇の中へと姿を消した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る