★第三章★ 予期せぬ再会(6)
「由々しき事態ね」
プラーネは短くそう言い、腕を組んだ。豊かな胸部が押し上げられ、より存在感を増す。
ミーティアとの再会から数時間後。山頂の休憩所にはシホ、ヴィエラ、ベネット、プラーネ、そして――通信魔法陣の中に浮かぶハレイの姿がある。
「ハレイ様、早急に対応を決めるべきです。ミーティアを戦犯認定し、蒼星全土の星の魔女への捕獲令発令を進言致します」
プラーネはそう言い、ハレイを見る。
「…………そうですね。それが妥当な判断でしょう」
やや間を置き、ハレイが口を開いた。
「確保されたら……ミーティアはどうなるんでしょうか」
シホが俯いたまま、誰に聞くわけでもなく疑問を口にする。
「オールトの雲へ送還されるわね。そして――審問会が開かれるわ」
「審問会に掛けられ、反逆罪に問われるだろうな。判決は極刑か……酌量の余地があったとしても永久幽閉は免れないってところか……」
プラーネが言い――ヴィエラが独り言のように呟く。
「そ……そんな……!!」
極刑……ミーティアが……? 無二の友を……、また……家族を失う……!? 恐ろしさにシホは震えた。
「待って……待ってください! 他に……なにか他に方法はないんですか!? まだミーティアは何かしたわけじゃないんです!」
顔を上げ、シホは必死に訴える。
「星の魔女がクーヴァと組んでるなんて、前代未聞の事態よ。それだけでも異常なのに――」
「『失われし魔術書』を狙って、さらにその願いがオールトの雲と星の魔女の滅亡とあっちゃな……」
「一刻も猶予は……ございませんわ。ほっとくわけにはいかないですの……」
プラーネに続き、下を向いたまま――シホの顔を見れないまま、ヴィエラとベネットが言葉を続けた。
「……! そんな……二人まで……! 待って、お願いだから!」
ヴィエラとベネットに詰め寄るようにシホが迫った。
「確かに……ミーティアはちょっと乱暴なところがあるのは認めます。でも……理由もなく人を傷つけたり、悪い事をするような子じゃないんです。何かきっと理由があるんです!」
そのままシホは前に出て、そこにいる皆の顔を見ながら懇願する。
「ミーティアの事はわたしが一番良く知ってます! 大切な友達なんです! わたしに話を……ミーティアを説得するチャンスをください! お願いします!」
シホは深く深く頭を下げた。光るものがぽたぽたと落ち、床に滲んでシミを作っていた。
――――。
痛いほどの静寂。気の遠くなるような時間が過ぎ――
「――――わかりました」
澄んだ声が響いた。
「ミーティアが説得に応じ、自らの罪を悔い、投降するというのであれば、審問会への送検は見送りましょう」
「!? ……ハレイ様!?」
その言葉にプラーネは驚きの声をあげる。
「事が公になれば、多くの魔女が不安を抱くことでしょう。危機が迫っている現状で、混乱は出来るだけ避けたいのも本心です」
「それは……確かに、わかります……しかし……」
諭すようなハレイの言葉に、プラーネが言いよどむ。
「シホ、あなたと彼女――ミーティアが養成機関で苦楽を共にしたかけがえのない友人同士であることは聞き及んでいます」
ハレイに語りかけられ、シホは顔を上げる。
「そんなあなたの強い願いを見せてもらいました。あなたなら本当にミーティアを説得できるかもしれません。それに賭けてみましょう」
「本当に……よろしいのですか?」
プラーネが不安げにハレイを見る。
「願いを叶える星の魔女が、自身に希望を持てないなど、あってはなりません。……きっとあなたの母――ステラ星雲長もそう言ったことでしょう」
「ありがとう……ございます……星女王さま……!」
ハレイの言葉に、シホは再度深く――頭を下げた。
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