第2話 本格始動!

教室を掃除した次の日いつもの待ち合わせ場所に淳也の姿は無かった。なにかあったのだろうか?だとしたら絶対僕か玲奈に連絡するはずだ。不安は大きくなるばかりだけど来ないなら仕方がない。とりあえず登校しよう。

校門の手前で玲奈を見つけた。向こうも僕に気がついて走ってくる。

「おはよ、ねぇ淳也は?来てないの?」

「うん。待ち合わせ場所に来てなかったから今日は学校休みなのかな。」

「そしたら連絡くらいしてくれてもいいのに。仕方ないから行こっか。」

今日も16時集合ということを知らされて教室に入る。人って不思議だ。先に楽しみな事があるとそれまでの時間があっという間に過ぎる。

15時45分教室に着く。まだ玲奈は来ていない。まだ少し埃っぽい部屋だがかなりマシになった。とりあえず先に掃除をしておこうとほうきを使って棚の埃を取っていたら、それから数分後の16時2分玲奈が教室にきた。

「ごめん!遅れた!ほんとあのくそはげ担任話長すぎ!」

ホームルーム終わってから走ってきたのだろう。かなり息を切らしている。

「それなら仕方ないよ。今日中に片付け終わらせられるようにがんばろ。」

「ありがとう。」

2人で掃除していると埃も小さな蛛も気にならなくなる。淳也には申し訳ないがこのまま2人きりの時間が続いて欲しいとどうしても思ってしまう。

「ねぇ、この後時間ある?」

「え?あるけど?どっか行くの?」

「行くけど場所はないしょ!片付け終わらしたら案内してあげる!」

「すっごく気になるから片付け本気でやることにするよ。」

なんだろう、玲奈から誘ってくることは珍しいからちょっと期待してしまう。片付けが終わり、

「お疲れ様。じゃー行こっか。」



連れてこられたのは楽器店だった。楽器店ってファンキーな店員さんとかそんなイメージだったけど僕たちが行ったのは全然違くてすごく綺麗なお店だった。

「すいません、初心者におすすめのドラムってありますか?」

そういうことか。たしかに軽音楽部っていっても楽器もないしだからといって音楽室の物は吹奏楽部が使うので自分で用意しなければならない。学校側がお金は負担してくれるらしいけど。

「初心者ですと……」

玲奈は難しそうな言葉が入り混じった説明を真剣に聞いてドラムを選んでいる。僕はギターコーナーへ行きエレキギターを眺める。駄目だ。全く違いがわからないし、玲奈のように店員さんに声を掛けることもできないから向こうから話しかけてくれるのを待つしかない。

「どんなギターを探していますか?」

2分くらい経ったら店員さんが迷っている僕を見つけて来てくれた。

「初心者におすすめのギターってありますか?」

「初心者ですとこのギターがおすすめですね。これは音が……」

ここの店員さんは初心者のおすすめを聞くと難しい言葉を言われるように教えられているのだろつか?全くついていけない。

「なので、このギターがおすすめですかね。」

「ありがとうございます。もうちょっと考えます。」

やっと解放されたのでとりあえず玲奈のところに行く。玲奈も解放されていて、ドラムをじーっと見つめている。

「どうだった?」

「んー。難しい言葉多すぎて全くついていけなかった。でもなんとなく目星はつけたかな。」

「そっか。僕もだいたいそんなかんじ。」

「よし、じゃあ帰ろっか。」



家に帰って淳也の事を考えてみる。連絡も来ないしなにかよくない事でもあったのだろうか。せめてLINEくらい返してほしい。SNSも全く見ている様子もない。

「ほんとにどうしたんだよ…」


ーそれから5日間淳也は学校に来なかったー



淳也が来なくなってから1週間経った日いきなり待ち合わせ場所に淳也が現れていた。

「よっ。」

「1週間も連絡すらよこさないでどうしたの?すごく心配したよ。」

「鹿児島に住んでるじいちゃんが死んじゃってちょっとメンタルやられちゃってな。」

なんだそういうことか。

「でも玲奈と1週間2人きりで嬉しかったろ?」

「馬鹿。そんなわけないじゃん。」

「はいはい。」

ニシシって笑いながら学校に向かって歩いていく。校門あたりで玲奈と会うと淳也がいることにびっくりしたのだろう。驚いた顔して走ってきた。

「え、淳也どうしたの?!」

「鹿児島に住んでるじいちゃんが死んじゃって…」

僕と同じ説明を受けた後

「そっか…。ご愁傷様です。でも今日はちゃんと16時あの教室に来てね!」

「わかってるよ。んじゃ、また後で。」

3人別々のクラスに入っていく。授業中はずっとこれからのことで頭がいっぱいだった。

帰りのホームルームが終わり教室に行くともう2人とも僕を待っていた。

「おう、おせぇよ。」

「2人とも早いね。今日は何するの?」

「実は淳也は来てない間どんなベースにするか決めてくれてたらしいの。私も決まったし。もちろん悠太も決めてるよね?」

うそだろ。まだなんにも決まってないし2人とも決めてるなんて聞いてない。押し切られる感じで

「うん。」

と言ってしまった。

「よし。じゃあ買いに行こっ。」



結局僕は最初に店員さんにおすすめされたギターにした。多分、人生で1番高い買い物したと思う。

「これでバンド本格始動だね。そういえばさバンド名どうするの?」

「なんも決めてなかったな。悠太なんか案ある?」

「そんないきなり言われても。」

「あ、じゃあさ!little beesは?!小さい蜂達って意味で!1人1人は小さくても集まれば大きな蜂にも立ち向かっていける気がするから!」

「それ僕は好きだな。賛成。」

「俺も気に入った。」

「じゃあ明日からlittle bees本格始動だね!」

なんだか明日から今より楽しい毎日が始まる感じでわくわくする。



次の日から早速ギターの練習が始まった。難しいがやりがいがあるしなにより3人でやっているとすごく楽しい。家に帰ったらすぐにケータイをいじって寝てしまう僕がギターの練習をするくらいには。





バンド活動をして半年ついに小さなライブハウスでのライブが決まった。



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