第1話 バンド結成

僕たち3人は都内でもまあまあな進学校に入学した。入学式は脳天がハゲたおじさん達の、長ったらしい式辞をほぼ寝ながら聞いていたら終わりに差し掛かっていた。新入生代表挨拶は玲奈がやるらしいから起きていよう。

「桜が舞う今日この日に……」

駄目だ。後ろ姿しか見えないしなにより話が玲奈っぽくなくて瞼が少しずつ下がってきた。

「この新しいかんきょ…………」




「いやー入学式めっちゃだるかったな。俺ほとんど寝てたわ。」

本当に寝てたのだろう。いつもは二重なのに今は一重でなんかすごく目つきが悪いきがする。

「寝るのはよくないよ。玲奈の式辞もすごく良かった。」

「うわ。悠太嘘ついた。あたし式辞読んで振り向いた瞬間悠太の事見えたけど爆睡だったじゃん!そういうの良くないよ!」

「バレちゃってたか。ごめん。」

まさかバレてたとは。言葉にしにくい悔しさがあるな。

「まぁでもあたしも式辞の10分前まで寝てたけどね。そんなことよりさ!今からサイゼ行こうよ!」

「お、それいいな。悠太は寝てたから玲奈にドリンクバー奢りな。」

「え、ほんと?」

「ほんとほんと。よし行こうぜ。」

まだ僕は行くともましてやドリンクバーを奢るとも言ってないのに、2人で勝手に話が進む。いや、まあ行くのだけれども。



「ね、あたしさ高校でやりたいことあるんだよね。」

結局僕が玲奈に奢ったドリンクバーのメロンソーダを口から離し、真面目な顔で言う。

「玲奈から言うなんて珍しいな。どうした?」

「世界一周してみたいとか?」

「ばか、悠太お前玲奈ならお年玉全部使って焼肉とかだろ。」

「たしかに。で?何したいの?」

「あたし達3人でバンド組んで武道館で歌いたい。」

え、何言ってるんだ?バンド?あの歌うバンド?武道館ってあの東京の?

「それ本気で言ってるの?」

まだ信じ切れていない淳也が呆れ半分、興味半分で聞いてみる。

「当たり前じゃん。あたしはいつでも本気だよ。この3人で軽音楽部を作っていつかは武道館で歌いたいの。」

「ちょっとは面白そうだけどこの学校軽音楽部ってあったっけ?」

「ないよ?」

本当に何を言ってるんだこの人。

「明日校長先生にお願いするつもり!」

「面白そうじゃん。俺は乗ったわ。」

こいつさっきまでそんなやる気無かったのにいきなりやる気出してきた。こうなると僕も断れなくなる。

「わかった。僕もやるよ。それで、みんなどの楽器やるの?」

「あたしはドラムやりたいかな。」

「俺はベースってのやってみたい。絶対カッコいいだろ。」

「その流れだと僕はギターかな。あれ、そういえばボーカルって誰やるの?まさか玲奈じゃないよね?」

「もちろんあたしじゃないよ?ボーカルは悠太にやってほしいな。悠太の歌声なんか好きなの。」

無理だ。とか嫌だ。とかいろんな理由は言えたけど、最後の好きなの。って言葉にドキッとしてしまい結局

「わかったよ…」

と言ってしまった。それを見て淳也がニヤニヤしている。ストローを鼻に刺してやろうか。

「よし。じゃあバンド結成だね。これから武道館目指して頑張ろう!」

玲奈が机の真ん中に手を出してくる。その上に淳也が手を乗っけて、最後に僕が手を乗っける。なんだか青春ドラマみたいだ。

「武道館目指して頑張ろう!えいえい」

『おー!』



次の日には校長先生にお願いしてなんとか軽音楽部を設立できた。場所は、二号館の誰も使っていない教室。その教室に16時集合と玲奈から登校した時に言われたので、ホームルーム終わってからその部室に直行したらもう玲奈が教室の掃除を始めていた。

「悠太遅いよ!」

「遅いって5分前じゃん。淳也は?」

「まだ来てないよ。淳也のことだしぎりぎりに来るでしょ。ほら、悠太も掃除して。」

ほうきを渡されたので床を掃除する。

それから5分、10分、30分経っても淳也はこの教室に現れなかった。

「本当に遅いね。まさか忘れたとか?」

「淳也に限ってそれはないよ。多少の遅れはあっても絶対来るでしょ。」

「とりあえず電話かけてみるね。」

玲奈が電話をかけるが全く出る気配がない。謎のモヤモヤ感を残したままその日は掃除して帰った。

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