数秒前の君へ。
白河 星夜
第0話 始まり
僕はつまらない人間だと思う。
運動も平均。勉強はそこそこできるけど楽しくない。ルックスはというと、同い年の女子よりそのお母さん世代に好まれるらしい。そんな僕にも好きなことがあった。それは歌うことだ。歌うって言っても1人カラオケとかじゃなくて、幼馴染の淳也がベースを弾いて玲奈がドラムを叩いてその中で僕がギターを弾いて歌っている時が1番気持ちがいい。この時だけは自分はこの世界に必要とされているって思える。って言ってもバンドを始めたのは高校生の時だ。
中学3年生の12月某ファストフード店で勉強していたら隣に淳也が座ってきた。
「悠太じゃん。勉強はかどってる?」
「君よりは進んでるしやってるよ。」
正直受験前で焦っている僕にとって淳也は邪魔だった。あんまり頑張らなくても点数取れちゃうタイプ。いわゆる天才ってやつ。
「それで?何しにきたの?」
「今日は悠太と勉強しようと思ってね。」
それは珍しい。いつも勉強なんてしてたまるかって叫び回ってたのに、どういう風の吹き回しだろう。淳也がバックから参考書、下敷き、問題集を取ったところで手が止まった。
「わり、筆箱忘れたからシャーペン貸してくれない?」
忘れた事は仕方ないのでシャーペンを貸した。
「サンキュー」
さりげなくこう言うことが言えるのが女子にモテる秘訣なんだろうか。玲奈は、
「あ、悠太今玲奈の事考えてたでしょ。」
「え、」
「めっちゃわかりやすいよ。ま、ちゃんといつかは気持ち伝えろよな。」
とだけ言って勉強に取り掛かってしまった。置いてけぼりになった僕は、時間差で数学を解き始める。そうだ。僕は玲奈が好きだ。
それから2ヶ月くらい経って僕たちは入試に挑んだ。僕の結果はまずまずで、合格ラインには届いてていた。他の2人はおそらく余裕だろう。一週間後、合否通知が家に届いた。いつも緊張しない僕だけどさすがに緊張して封筒を持つ手が震えた。大丈夫。全力でやった。ふっと一息ついて封を開け、中の通知を取り出す。
合格。
2人にLINEで報告するのは勿体ない気がして家に直接報告した。もちろん2人共合格。
ここから僕たちの夢物語が始まる。
と思ってたのに。
信じてたのに。
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