第2話 オレのバイト先紹介


 オレがこのバイトを始めたきっかけは、とある奴を迎えに行くためだ。


 許可なく、勝手にオレのなにもかもを誤解して異世界に行っちまった奴の、首根っこ捕まえて「ふざけんな!」と啖呵を切りに行くのだ。


 が、奴のいる場所にいくのは容易ではない。


 困っていたオレに、ここの経営者が、とある「提案」をしてくれたのだ。


 この喫茶は、江戸吉原にいた「椿」さんが運営する。

 言葉の綾ではない。

「江戸」時代の「吉原」だ。


 因みに彼女への、年の話及び呼びかけは気をつけなければならない。

 計り間違うと、一瞬にしてリアル阿修羅に変身されてしまう。

 女に年の話をすべきではない。

 ……まあ、とりあえず二百歳は下らないはずだが。 

 今でも二十代半ばの外見を保っている。


 でもまあ、椿さんだけではない。

 一度生を全うしたはずなのに肉体を持っている人?モノ?が、幾人もそこらを普通に歩きまわっている。

(そしてここでくつろいでいく)


 どう言った基準で黄泉返ったかは知らないが、とりあえずここの経営者でありオレの雇用主である占い師が関わっている。


 というか、既に占い師レベル超えてんじゃんね?

 自称とか付けるべきだよな……。通常とはかなり違う意味で。

 まあともかく。

 この喫茶の名付けも、占い師らしい。


 「使い古したモノタチ」と言う意味と

 「使い終わっても価値が有るモノタチ」の喫茶、だそうだ。


 彼女のネーミングセンスは、かなり面白いと思う。


 ……でもいつ、名づけたんだろうか。


 江戸に「アンティーク」という言葉はあったのか……?


 まあそんな訳で。


 この喫茶には死霊が集い宴会を開いたり、幽体を利用して集めた情報(盗み聞き……まあ犯罪だな)の公開場としても機能し。


 自分たちが生きている時よりも身近になった妖怪たちへの、「人間界常識指導所」になったり。


 果てには、妖怪たちと懇意な退魔師までもが集まる、異様な喫茶になっている。


 ついでにそれらを祓おうとする、坊主、陰陽師、エクソシスト、エトセトラエトセトラ、が来たり、来たり、来たり。




 ……まあ、毎日が刺激的で楽しいバイト先、なのである。まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る