第50話 勇者、部下に笑われる
「昔の女とか……そんな奴いないぞ?」
「え”……カーライルさん、もしかして……年齢=……?」
「うるさいな……今まで勇者として、ロラント王国で魔物と戦う日々だったんだ……そんな暇なかったんだよ……」
フランが引いたような表情をしながら言う事に、俺は顔を逸らしながら答える。
くそう……こんなことならもっと遊んでれば良かったぜ……まぁ、ルインのような手あたり次第という遊び方は好きじゃないし、できるとも思えないがな。
「ふふ……うふふふふふ……そうですかぁ……そうなんですかぁ……」
「なんだその気持ち悪い笑い方は……」
「うふふふふ……何でも無いですよぉ? ……そうなんですかぁ……あのカーライルさんがぁ………うふふふふふふふふふゲホッゴホッ!」
「ほんとに気持ち悪いな! 咳き込むくらい笑うなよ!」
何故か嬉しそうに、気持ちの悪い笑い方をするフラン。
咳き込むくらい笑うとか、どんだけだよ……そんなに俺の昔の話が面白かったのか?
「ふむ……昔の女でないとすると……追っかけか……」
「そんなのいるわけないだろ! 魔王国まで追っかけて来るとか、ちょっと怖いわ!」
「そうか? 熱烈で良いと思うがな……」
「熱烈過ぎて、こっちが引いちゃ意味ねぇだろうが……」
「そういうものか……? しかし、どうするのだ? 向こうはカーライルの事を知っている様子だ、城下町にいるらしいが」
「んー、どうもしねぇかな。誰かわからないし、わざわざ向こうに俺が行く必要も無いだろ。どうしても用があるなら、またここまで来るだろうしな」
「それもそうだな。この件は放っておいても良さそうだ」
「えー、面白くないですよー。カーライルさんを狙う女豹がどんな奴らなのか、確かめたいです!」
「俺を狙ってるわけじゃないだろ……それに女豹って……」
見た事も無いのに、そんな評価を下すのは止めろフラン。
「さて、今日は異様にトレーニングに熱が入ったからな……風呂に入るとしよう。カーライルよ」
「何だ?」
「一緒に風呂に入らぬか? 男には裸の付き合いが必要だぞ。共に筋肉について熱く語ろうでは無いか!」
「ウホッ!……ウホッ!」
「入らねぇよ!? フラン、何でお前はそれを二度言った!?」
まったく、何が楽しくてむさ苦しい筋肉だるまと風呂に入らなきゃいけねぇんだ。
アルベーリのブーメランパンツ姿にも辟易してるってのに……最近慣れて来た感じがするのが嫌だな。
そしてフランも、おぞましい想像なんてしてんじゃねぇ。
「麗しい……」
「何も麗しくねぇよ! むさ苦しいだけだ! 鼻血出してんじゃねぇよ!」
背筋の凍るような想像をして、鼻血を出すフランに突っ込む。
はぁ……何で魔物と戦うよりも、ここにいる方が疲れるんだろうな……。
「ふぅ……」
突っ込み疲れたので、早々に執務室を出て部屋に帰った。
今は風呂からあがって、一息ついたところだ。
ちなみに、今日も絡んできたフランは、4階にあるこの部屋の窓から叩き落して、鍵という鍵を閉めておいたので、もう入って来ることは無いだろう。
……叩き落すのはやり過ぎたか?
「カーライルさんのアホ―!」
「誰がアホだ。夜中にうるせぇ!」
「ぐべっ!」
窓の下で叫ぶフランに、部屋にあった金属製の皿を投げつけて命中させる。
カエルが潰れるような声を出して沈黙するフラン。
叩き落した事をやり過ぎたと、一瞬でも考えた俺が馬鹿だった。
今度から、重りを乗せて勢いもつけて叩き落す事にしよう。
「しかし、俺を訪ねて来た人間……か……」
心当たりは無いが、やはり気になる。
こちらから探すような事はしないが、一体誰なのだろうか?
ここに来てから、周りは魔族だらけで人間は俺一人……久しぶりに人間に会うのも良いかもしれないな。
まぁそれも、向こうがまた訪ねて来たらの話だ。
「……寝るか」
これ以上考えていても、無駄な時間を使うだけだ。
風呂で温まった体を冷やさないようにベッドに入った。
……その夜、疲れたオッサンの顔が乱舞し、断末魔の悲鳴を上げ続けるという悪夢を見た……。
ブリサードの呪いかなんかか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます