第49話 勇者、ブリザードの真実を知る



「それで、フランはなんで気絶しているんだ?」

「あ……」


 ずっと引きずって来ていたのを忘れてた。

 多分だが、王城の階段を上る時に頭でもぶつけたんだろうな……ずっと静かだったから忘れてた。


「まぁ、色々あってな。そこ、良いか?」

「うむ」


 アルベーリの許可を貰って、机の横に設置されているソファーにフランを運んだ。

 丈夫な奴だから、そのうち目を覚ますだろう。


「して、ブリザードの方は?」

「数は減らして来たが……しかし、あれは何だ?」

「何だとは何だ?」

「オッサン顔で、何故か話ができたぞ?」

「それがブリザードだからな。……正確にはブリザードの子供だが」

「子供だと……あの顔でか?」

「あの顔でだ」


 あんな、仕事に疲れた中年のオッサンの顔をしておきながら、子供……。


「そもそもブリザードは、そなた達が行った山そのものなのだ」

「は?」


 山そのものがブリザードって、どういう事だ?


「丸まったブリザードに土と雪が積もり、山になった。それが正体なのだ。本体は人の形をしているぞ」

「それじゃ、俺達が破壊した子供と言うのは?」

「ブリザードから生まれた新たなブリザードだな。顔だけなら、まだ本体と繋がってるはずだ」

「じゃあ……あの顔が成長したら、山のように大きくなるという事か?」

「そういう事だ。大量に生まれて来たのは、吹雪が止まない事でわかるからな。定期的に数を減らさないと、ブリザード自身も、周辺の国にとっても危険な事態に発展しかねん」


 だからあのブリザード達は、自分から破壊される事を望んでいたのか……。

 まぁ、本体の上で別のブリザードが大量に成長したら、踏みつぶされそうだしな。


「ん?」

「アルベーリ様、報告があります」

「入れ」

「はっ!」


 ブリザードの生態を知って、微妙な気分になっていた時、扉がノックされ一人の兵士が入って来た。

 俺をここまで案内してくれた兵士だな、見覚えがある。


「何があった?」

「緊急の事ではございません。ですが先頃、カーライル様を訪ねて来た方がいらっしゃいまして……」

「俺を?」


 兵士は何故か俺の事を様付けで呼んでるが、それは気にしないでおこう。


「はっ! 人間の女性二人組でした。カーライル様と会いたいと言っておりました」

「それで、どう対応したのだ?」

「その時はまだカーライル様が戻られていなかったので、留守だと伝えると、また来ると言って城下町へ戻って行きました」

「そうか……ご苦労」

「はっ!」


 報告を終えて、兵士が出て行くのを見送った。

 しかし、俺を訪ねて来る人間……ねぇ。


「知り合いか、カーライル?」

「いや……女の知り合いがいないわけじゃないが……二人組か……覚えが無いな」

「ロラント王国が、カーライルを連れ戻そうとしている可能性は?」

「それは無いだろう。あそこの王様は無駄にプライドが高い。日頃は見せないよう振舞っているが、自分から国外に出た者を、連れ戻すような事はしないだろうな」

「そうか……」


 本当に誰だろう……?

 すぐに思い付く女の知り合いと言えば、リィムくらいだが……女の二人組だから候補から外れる。

 あいつは、同性の知り合いが極端に少ないらしいからな……子供の頃から父親との鍛錬をして来たせいらしいが……。

 あとは、ミオリムとマイアだが……これなら二人組との話と一致するが、ルインが主導したとはいえ、俺を追放したあの二人が魔王国まで来るとは思えない。

 そもそも、国王くらいにしかここに来る事を伝えて無いしな。


「うぅむ……心当たりが無いな……」

「カーライルさんの昔の女ですよきっと!」


 誰が来たのかわからず悩んでいると、いつの間に起きたのか、フランが勢いよくアホな事をのたまった。



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