第19話 元勇者パーティの末路はいずこ
カーライルが突っ込み疲れをしている頃、ロラント王国の一角では、ルイン達が縄でぐるぐる巻きにされて運ばれていた。
「おい、放せよ! 俺は勇者だぞ! こんな事をしてただで済むと思うなよ!」
「うるさい! お前はもはや罪人だ。勇者と偽り無辜の民を騙した、な」
「ルインのせいよ……」
「くそ……俺はこんな事では終わらんぞ……」
馬車の中で、監視の男に怒鳴られながらも、縛られて転がされているルインは、諦めずにもがいている。
ミオリムやムオルナは、見苦しくもがく事は無いが、隙あらば逃げ出そうと窺っているようだ。
「しかし、こんな簡単に捕まえられるとはな」
「勇者のいない奴らなんて、こんなもんだろ?」
「一人、取り逃したがな」
「まぁ、主犯のルインを捕まえただけで充分だろ」
「そうだな」
馬車の横を馬に乗って走りながら、男達が雑談している。
全員、村に泊まって寝ている間に宿へ侵入した者達だ。
彼らは国王からの命を受け、勇者を追放した者達を捕らえに来た精鋭。
カーライルという、ロラント王国最大最強の戦力が国外に行ってしまうきっかけとなった者達を許せなかったのだろう。
国王の八つ当たりとも見えるが、実際ルイン達は村の人々を騙して金品を奪い、女性をも用意させるという罪を犯していたため、捕まえる名目も十分だったのだ。
「ちくしょう……勇者である俺が何でこんな目に……」
「お前は勇者ではなく、戦士だろう。何を言ってるんだこいつは?」
「たまにいるんだよなぁ、自分の職が信じられなくて、自分が勇者だと思い込む奴が」
「儀式の弊害ってやつか? だが、あれは成人するころには解けるって話だぜ?」
「そう聞いてるがな。だがこいつは解けて無いのかもしれんな」
「だから、自分を勇者だと思い込んで、存在するはずの無い本物の方の勇者を追放したってのか。馬鹿な奴だ」
「あぁ。原因はどうあれ、国王様はお怒りだ。こいつの運命も決まったようなもんだな」
馬車から漏れ聞こえて来るルインの声に、外にいる男達は談笑するように話している。
これは、ロラント王国に損失を出した男への罰なのか、それとも正道でいようとするカーライルを見て自己を改めようとしなかったルインの失態なのか……。
どちらにせよ、自業自得のようである。
「危なかったなのよ。私だけ起きてて良かったなのよ」
ルイン達が掴まった村の隅に隠れて、馬車を見送ているのはマイアだ。
彼女だけはお金を数えるのに夢中で、男達が侵入して来た時に寝ていなかった。
狩人の習性なのか、音を立てないようにしていたため、男達は寝ていると考えたんだろう。
そしてまた、狩人という職の特性で侵入に気付いたマイアは、一人だけ宿から抜け出して村の隅に隠れた。
おかげで捕まる事なく、ルイン達を乗せた馬車を見送る事ができたようだ。
「捕まらなかったのは良いけどなのよ、一人かぁ……なのよ」
特徴のある語尾を呟きながら途方に暮れるマイア。
マイア一人では、魔物を退治する事はできない。
かと言って、今までルインに近かったため悪名が広がっている可能性があり、他の誰かとパーティを組む事もできない。
「ルインの馬鹿が好き勝手やったから、私にも影響してるなのよ」
そこまではマイアでも考えられるようだが、この先どうすれば良いのかを考える事はできないようだ。
「ひとまず、この村を離れるしか無いなのよ」
ルインを捕まえた男たちは、連れて行く前に村長に事情を告げていた。
騙された事を知った村長は、ルインに怒りを見せていたため、同じパーティであったマイアもここにはいられない。
一人難を逃れたマイアは、ルイン達が連れて行かれた道とは別の道を、トボトボと歩いて行った。
ルインに加担していたために共犯とも言えるが、自分からは決して悪事を行わなかった事が、捕まらない幸運となったのかもしれない。
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