第11話 勇者、仕事を開始する



 それからしばらく、町長からグリフォンの事を聞き取る。

 この町からさらに西に少し行った場所にある森で、何があったのか急にグリフォンが大量に発生したのだと言う。

 グリフォンは、魔族を襲う事もあるが、多くは家畜を襲うので数を減らさないと近隣の村や町に被害が出るとの事だ。

 そこまで聞くと、殲滅したらいいじゃないかと思うが、グリフォンがいる事で森の自然が保たれている側面もあるので、安易に殲滅はできないらしい。

 ……俺には理解できなかったが……グリフォンの食べ残しや糞を肥料に木々が育つとでも言うのか?


「しかし、これはまた……確かに大量発生だな」

「そうですね。グリフォン自体は珍しくありませんが……ここまでの数は見た事がありません」


 町長の話をもとに、俺達はレロンからさらに西にある森に来ていた。

 正確には、森が見える場所……だけどな。


「これじゃ森の中には入れないな……」

「そうですね……どうしましょうか?」


 森の外にまでグリフォンが溢れて来てやがる。

 これ、放っておいたら町まで大量に押し寄せて来るんじゃないか?

 この様子を見ると、森の中はグリフォンで埋まってるんだろうな。


「どうするって言われてもな……」

「何も対応策が見付からないと?」


 フランが俺を見ながら、眼鏡を指でクイッと押し上げるような仕草をして睨む。

 俺を試すような言い方だが、お前……眼鏡かけてないからな?


「はっ、決まってるだろ。こうするんだ……よっと!」


 俺はフランをその場に残し、森に向かって走りながら腰の剣を引き抜く。

 この剣はロラント王国で勇者として活動してた時からの相棒だ、またこっちでもよろしく頼むぜ!


「はぁ!?」

「ふっ!」


 俺が何も考えずにグリフォンの群れに飛び込んだように見えたんだろう、フランが驚く声を上げているが、それは無視して、引き抜いた剣を気合を込めて横一閃………続いて縦にも一閃だ。

 俺が振り抜いた剣から不可視の刃が飛び、森の外に固まっていたグリフォン達が、走って来る俺に驚いた表情のまま、全て真っ二つになった。

 ……これで10匹ってとこか……あ、勢いを付け過ぎて木まできれてら……まぁ……良いか。


「……勇者と言うのは化け物の事だったのですか?」

「化け物とはひどいな」


 森の入り口で切り裂いたグリフォンを数えていたら、置いて来たフランが駆け寄って来ての開口一番、これだ。

 まぁ、慣れてるけどな……化け物って言われるのも、怖がられるのも……。

 パーティを組む前、まだ一人だった頃はよく言われてた……パーティを組んでからは、他の奴らが隠れ蓑のようになって言われなくなったが。

 ……前に出ないようにして、サポートに徹してたおかげもあるかもしれない。


「……失礼しました。気にしているようですね……以後、同じ事は言いません」

「すまんな」


 俺の顔色を見たのか、フランが謝って来た……結構気がつく方なんだな、お前。


「グリフォンの処理はどうする? そういう事を何も考えて無かったが」

「このままにしていたら、腐って病気が蔓延しそうですね……わかりました、ここは私が何とかします。カーライルさんはこのまま森のグリフォンを討伐して下さい。……ですがくれぐれも……」

「殲滅するなって言うんだろ? わかってるよ」


 グリフォンの処理は任せ、俺はフランに答えながら森の中に足を踏み入れる。


「……早速か」


 予想していた通り、森の中はグリフォンで埋まっているようだ。

 まだ後ろを振り向けば、フランの、主張が激しいお胸が見えるくらいだと言うのに、目の前にはグリフォンが5体並んでいる。

 騒ぎを嗅ぎつけたのか、俺に対して敵意を向けている。


「剣は……この森の中じゃあまり使えないな……なら……こいつで!」


 さっきのような剣気を飛ばすと、森の木が何本犠牲になるかわからないからな。

 俺は剣を鞘にしまって、拳を握りながらグリフォンに向かって近づく。

 当然、グリフォンは俺に噛みついて来たり、腕を振るうなどの抵抗はして来たが、遅い。



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