第12話 勇者、魔物の焚き火を作る
「ふっ……はっ……とぅ……やぁ……アチョー!」
1匹につき1発づつ、拳を入れて行く。
深々と突き刺さった拳は、それだけで内臓を破壊し、グリフォン達は次々と地面に倒れ伏した。
……最後だけ調子に乗った声が出てしまったな……反省、反省。
俺が拳をこれだけ使えるのもリィムのおかげだな、感謝しないと。
「勇者と言えど、格闘は最初からできるわけじゃなかったからな」
リィムが、師匠である親父さんから受け継いだ格闘術。
一緒に居る間、暇な時間を見て教えてもらってた……リィム、元気にしてるかな?
……おいて来たのは俺だがな。
「おーい、こっちも頼むなー!」
「……わかりましたー!」
森の外でグリフォンの処理をしているフランに、こちらのグリフォンの処理も頼んで、さらに森の奥へと進む。
「……とりあえずこんなもんかな?」
そう呟きつつ、右側の木の陰から襲い掛かって来たグリフォンに拳を打ち込む。
森を一直線に、真っ直ぐ進んで反対側から出て、また森の中に入ってグリフォンを探しながら歩く。
ある程度は残さないといけないから、こちらに気付かなかったグリフォンは倒さずそのままにした。
「終わったぞー」
「あはははは! 冗談はよしおさんですよ。こんなに早く終わるわけないじゃないですかぁ」
森に入ってすぐの場所……俺が二度目にグリフォンを倒した場所で、処理のためにグリフォンを燃やしながら暖を取っていたフランを見付け、声を掛けたら信じてもらえなかった……。
「よしおさんって誰だよ……それはともかく、本当にグリフォンを倒して来たんだって。言われた通り、いくつかのグリフォンは残してるけどな」
「……嘘でしょう……? 数日はかかると見込まれてた作業ですよ? こんなに早く終わるなんて信じられません」
「嘘だと思うなら見て来ればいいさ。こっちの処理は俺がやっておくから」
そう言って、フランを森の奥へ送り出す。
その場に残ったグリフォンと、近くで倒したままにしていた死骸も持って来て一緒に焼……いや、ちょっと待った。
「ここで一気にやったら、森まで燃えるな……」
ちょっと面倒だが、森の外まで運び出して積み上げる。
ええと……確かムオルナの使ってた魔法は……こんな時に思い出すのが、俺を追い出したパーティメンバーというのが忌々しいが、あいつの得意な魔法は火を使う事だったからな、仕方ない。
「ファイア、ファイア、ファイア……」
一気に燃やすため、魔法を3回連続で発動。
ピラミッド型に積みあがったグリフォンの、右下部分、左下部分、中央部分とそれぞれに炎が着弾し、燃え広がる。
「日が暮れて来たから、これくらいが明るくてちょうど良いな。暖かいし……」
ロラント王国と違って少し冷たい風を受けながら、燃えるグリフォンの火に近付いて暖を取る。
そうこうしてるうちに、森の中からフランが出て来た。
その顔は驚愕したまま固まっている。
「驚きました……本当にグリフォンをあらかた倒してしまっているとは……」
「だから言っただろ?」
「というか……この火は何ですか! こんなにいっぺんにグリフォンを燃やすなんて!」
「……いけなかったか?」
「いけなくはありませんが……一体どうやって……」
「いや、普通に魔法で……魔族だからフランにもできるだろ?」
「できませんよ! 1匹か2匹を燃やすので精一杯です! 見るからに10匹以上いるじゃないですか! これだけの質量を燃やすのに、どれだけ魔力がいると思ってるんですか!」
うるさいなぁ……ちょっと魔法を3回撃って燃やしただけなのに、何を叫んでるんだか……。
「魔法撃ったら燃えた、それで十分だろ?」
「はぁ……もう良いです。勇者って一体……」
「……普通の人間?」
「そんなわけないじゃないですか! ……もう」
そろそろ叫び疲れたのか、フランも俺と同じように、グリフォンが燃えてる火に当たって暖を取る。
グリフォンの焚き火かぁ……豪勢なのか何なのか……あ、食べられる部位を切り取るのを忘れてた……食料を持って来てないしな……仕方ない。
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