第5話 __町__番地の道

逃げ切れたけど・・・、ここ僕たちの町の端っこだよ・・・。

どうしよ・・・、あのバケモノから逃げつつこの子を家に帰して、僕も家に帰らないといけない・・・。

最悪、僕だけなら喰われてもいいか。

「えっと・・・、どうする?」

「・・・。」

うーん、うまい具合に見つからない道を見つけて、いや・・・、もうあんな怖い目には合わせたくないから絶対安全なルートを選ばなきゃ。

「ねぇ、私大丈夫だよ。」

「ぇ?どういう事?」

「私、あんなバケモノ怖くないよ。」

「ぇ?」

「だから、少しくらい危険でもいいよ。・・・、私を置いていっても良いよ・・・。」

「えっ?!何言ってるの?君は絶対に置いていかないよ!」

「でも、私が居たら邪魔に・・・、」

「そんなことない!」

「・・・。」

「君が居たから僕はアイツから逃げてたんだよ?僕は君が居たから生きてるって言っても過言じゃないよ。僕はあの時怖かった、足がすくんだんだ。でも、君が近くに居てくれた、居てくれたことによって僕は勇気を出せたんだ。だからさ、置いていってなんて言わないでよ・・・。」

僕は心の底から思ってることをそのままぶつけた。

言葉選びが下手な僕だから、傷つけてしまったかもしれないとか思った。

あーあ、僕って励ますことすらできないのかな?

ずっと、黙ってる・・・。

僕は声をかけることすらできない。

・・・。

僕って駄目だな・・・。

僕は何も出来ずにただ突っ立ってると、声をかけてきてくれた。

「ありがとう・・・。」って。



いつも思うの、貴女ってお人好しよねって。

どんな時も、自分よりも誰かの事を中心に考えてるねって。

私も貴女みたいに綺麗な人間になりたいって思うけど、極論で言ってしまえば私は他人を蹴落とそうと必死だ。

こんな人間が、貴女みたいな綺麗な人間になれるわけがない。

少し飛躍した考えだけど、私が今までやってきた事の天罰が来たんだと思ってる。

バケモノは屹度私が呼び寄せたんだ。

貴女を巻き込むなんてことできないよ。

私はここで死ぬことが決まってるんだろうけど、貴女は生きなきゃだめだよ。

こんな人間・・・、こんな私を助けなくていいよ・・・。

「ねぇ、僕ってダメな奴かな?」

突然私に話しかけてきた貴女。

「全然ダメな奴じゃないよ。」

私は思ったことをそのままいった。

「ならさ・・・、僕の事を信じてくれないかい?僕の事を信じてついてきてくれないかい?」

「・・・。」

「いいよね?」

私は何も答えられない。何も。

貴女は黙って私の手を握った。

そして、

「一緒に家に帰ろう?」

私に向かってにこりと微笑み、そういった。

「・・・、うん。」

私は只、返事しかできなかった。

強いね、貴女は・・・。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「僕と私」と『ボクとワタシ』 暗闇研究所 @densibuhin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る