第一章 独り暮らしがいきなり騒がしくなった理由


松村は、仏壇の前に座ると線香に火をつけ、手を合わせる。そして、俺の方に振り向くと、こう言った。


「大変だったな…。3日前に、こっちに帰ったら、お袋に、お前の両親が亡くなったって聞いてさ。」


俺は、松村に軽く笑って見せた。


「お前も、水臭い奴だな。なんで、すぐに知らせないんだよ。」


「あ、ああ、ごめん。バタバタしてたから……。」


突然過ぎて、そこまで頭が回らなかった。バタバタしてたのは確かだが、そんな余裕すらないぐらい、何だか、気落ちしていた。


「今日から、ここで一緒に暮らすからな。」


「うん……えっ?あっ?ええっ?ど、どういうこと?」


「どういうことって、一緒に暮らすって言ってんの。」


「はぁ?!」


訳が分からず、ポカンとしている俺の肩をポンポンと叩くと、松村は、フッと笑った。


「まっ、心配すんなって。生活費とか光熱費、あと家賃なんかは、ちゃんと払うから。」


いや、そういう問題ではなくて。


「お前、仕事どうするんだよ?」


いや、俺も、そういう問題ではなくて。


「大丈夫だ。ちゃんと、こっちで仕事、決めてきたからさ。」


いやいやいやいや。


「親には、話してるし、うちの親も賛成してるから。

俺の部屋、2階を使わせてもらうよ。」


「おい、お前………!」


「案内は、いらないぜ。勝手知ったる、お前の家。なっ。」


なっ…じゃなくて。松村は、荷物を持って、2階へ上がって行く。


ちょっと、待て。落ち着け、俺。何が起きてる?なんで、こうなる?えっ?えっ?ええ-----っ?!

完全にパニック状態。


ピンポーン。はっ!俺は我に返り、頭を振ると、玄関へ向かった。

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独り暮らしの俺の家に同居人がいるが、それぞれ、いろいろとあるらしい こた神さま @kotakami

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