第一章 独り暮らしがいきなり騒がしくなった理由


 俺の名前は、鷹島 知也(たかとう ともや)。23歳。両親と実家で暮らしていたが、去年、両親を病で亡くし、今は独り暮らしをしている。


2階建の一軒家。両親が生きてる時には、さほど感じなかったが一人になると、すっげぇ-、広いなと思える。


しかし、何だよな。両親いっぺんに死ぬなんて考えてもいなかった。親父が癌で死んで、バタバタやってると、次に、お袋が倒れて、後を追うように死んでしまった。


生きてる間は、口うるさい、面倒臭いと思っていたが、居なくなると、やはり、寂しいものである。


親戚付き合いもなく、兄弟も居ない。祖父母も俺が生まれる前に他界している。


いや、広い。広過ぎる。こんな広い家に一人でいると、かなり、寂しく感じるものだ。


「親父、お袋。俺…これから、どうすればいい?一人ぼっちだよ。」


頬をスッと、生ぬるいものが流れる。俺、泣いてんのか?この俺が?寂しくて、泣くのか?この年で?


だけど、泣いてもいいんだ。この家には、もう誰も居ない。いっそのこと、家を売って、アパートにでも引っ越そうか。


そんなことを考えていると、ピンポーンと鳴り、俺は玄関へと向かった。


「はい、どちら様?」


俺が言うと、玄関の外で声がした。


「鷹島、俺だよ。松村。」


「松村?どうしたんだ?」


松村 健司(まつむら けんじ)。俺の高校の時の友達。高校卒業してから、地元離れて就職したと聞いたが、帰って来てたのか?


そんなことを思いながら、俺は、玄関の鍵を開けドアを開けた。ドアが開くと同時に、松村は大きな荷物を抱え入ってきた。


「お前、帰って来てたのか?」


「あ、ああ。戻ってきた。」


「えっ?」


「中に入るぜ。」


そう言うと、松村は靴を脱ぎ、中に上がってきた。


「お、おい、松村!」


松村は、荷物を持ったまま、奥の部屋へ向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る