第13話 第一回学生食堂料理バトル大会<後編>
料理が一通り出揃った所で実食タイムとなった。
ウララやミレアたちの目の前に料理が運ばれてゆく。引き続きウララが司会進行を行っていた。
「さあ! いよいよお待ちかねの実食タイムです。正直調理中からずーっとお腹が鳴ってったんですよね。
というわけで、最初の料理はサラト・レ・ゴウマ選手作の~? そう、サ・ラ・ダ、だー!!
いかがでしょう、ツィーダ教授?」
目の前に置かれた色取り取りのサラダを前に、まずは見た目の感想を求める。
「そうですね……見た目は普通のサラダのようですね」
「ですよね! 普通のサラダです」
ホークスが突っ込む。
「いや、お前とツィーダ教授の言う「普通」の重み違うからな!」
だが当のウララは気にしていない。
「ではこちらの普通のサラダを作られたサラト選手にお話を伺いましょう」
と、調理中の時と変わらずひどい実況を繰り返すウララは、壇上に並んでいたシェフの中でサラトの前にインタビューをしに行く。
「サラト選手、こちら普通のサラダのようですが拘られた点はありますか?」
サラト・レ・ゴウマ。褐色の長身なシェフだが、なぜその体躯で戦士などではなくシェフなのか誰もが聞きたくなる程の均整の取れた筋肉。それが服の上からでも分かるガッシリとしたスタイルの持ち主だった。しかしウララはそんな事はお構いなしに失礼なインタビューを開始する。
「見た目も味も普通そうですし、ぶっちゃけどうなんでしょう?」
「ふ、普通のサラダ普通のサラダって……まあ良い。
調理中も見ての通り、素材の味を引き出すのに気を使ったサラダだ。栄養バランスにも気を付けて厳選した27種類の緑黄色野菜をふんだんに盛り込み、ドレッシングには岩塩と柑橘系の果物を用いて全体的にサッパリと仕上げてみた」
「ふーむなるほど。つまり食べてみれば分かるということですね!」
サラト選手が丁寧にした説明を全て無に帰す返答を残して自分の席に戻っていくウララ。会場中の誰もが彼に同情していた――。
ホークスが怒りの声を上げる。
「そうじゃねえだろ! ったく、まあ確かに見た目は普通そうだが、食べてみるか」
そして審査員の全員が一口食べてみた瞬間、脳裏に初夏のさわやかなビーチの風景を思い浮かべる。
「こ、こいつは……なんて清涼感なんだ……」
正直サラダということで若干バカにしていたホークスだったのだが、サラダを食べる手が止まる気配は無かった。それは他の皆も同様で、次々と完食していく。ウララも「うまー!」と言いながらあっという間に完食してしまった。
「お、美味しい……」
すっかり職務を放棄してしまったウララにホークスが声をかける。
「お、おいウララ! インタビュー、インタビュー!」
「はっ! そ、そうだったわ。オホン……いかがでしたか? ミリア生徒会長」
食べ終えてナイフとフォークを置いたミリアが感嘆のため息を漏らす。
「正直侮っていたわ。まさかサラダにこれほどまで心を踊らさせることがあるなんて……間違いなく、今まで食べてきたサラダの常識を覆されてしまいました。これまで食堂で出されていたサラダとはまるで違いますよね?」
そう問われ、サラト選手は素直に答える。
「はい。今回の勝負に合わせて特級で仕上げました。ただ、普段のサラダとそこまで遜色は無く多少バージョンアップさせた程度に過ぎません」
「と言う事は、普段の食堂でもこれを提供するのが可能という事ですね?」
「もちろん」
静かにほほ笑むサラト選手にウララが大きく頷いた。
「うんうん! とのことでしたが、ツィーダ教授の見解はいかがですか?」
「これまで世界各国のサラダを食べてきましたが、これほど見た目と味わいのギャップにやられたサラダは在りませんでした。間違いなくナンバーワンです」
会場中が「おおおー」と、どよめく。
そしてサラダの空いた皿は下げられ、続いて並べられたのは――。
「続いて、フィー・フィシェート選手の魚料理が運ばれてきました!
見た目はちょっとした魚の煮つけって感じですが、果たしてどうなんでしょう。
いかがでしょう、ツィーダ教授?」
「こ、これは……この魚、スィルにかけられたタレの艶の見事なこと……まさに黄金のタレ。この領域に達するまで、どれ程の精錬を重ねてきたというのか……それを考えただけでも賞賛に値します」
「ですね。魚はアレでもタレが何か凄そうな気がしますよね!」
ホークスが今日何度目かの突っ込みを入れる。
「アレってなんだよ! 魚も十分美味そうだよ!」
そしてやはり気にしていないウララは、今度はフィー選手の元へとインタビューをしに行った。
蒼い髪をした半人半漁の女性シェフ。そんな彼女に対し、ウララはまたも言葉を選ばずに物申してしまう。
「フィー選手、私あんまり魚料理って好きじゃないんですけどどうなんでしょう?」
「あ、あなた、さっきから何か言葉のチョイスが……ま、まあ、仕方ないのかしら……
オホン、こちら「スィルの甘辛煮つけ」は、教授のおっしゃる通り少々特別で、三日三晩煮込んだ秘伝のタレの上澄みだけを使用した物になり、私の師匠に教わった物に更にアレンジを加える事で更に魚への相性を追求してみました」
「お! 良いですね、秘伝のタレきましたね! そう聞くとどんな料理でも美味しそうに感じてしまうのは私の気のせいでしょうか?」
ホークスは思う。
「(あいつ、あんな語彙力でよく今まで時空捜査官なんて大層なことやってこれたよな……幼稚園からやり直した方が良いんじゃないか?)
ったく、とりあえず気を取り直して食べてみるか……」
と、ホークスがこれまた一口食べた瞬間だった。
「う、美味い……タレの上品な味が魚の身の奥にまで浸み込んでいやがる……それでいてこの身のふわっとした仕上がりは何だ……」
サラト選手のサラダがビーチならば、こちらは高原に流れる小川の清らかさだった。
「良いわねこれ、ご飯が欲しくなるわ」
ウララも夢中で食べていた。そして途中で我に返り審査員の方に振り返る。
「アマス副生徒会長、いかがでしたか?」
ナプキンの端で口を軽く押さえたアマスが語り始める。
「そうですね、タレの上澄みと伺っていたので薄味を想像していたのですが、とてもしっかりとコクのある味で驚きました。フィー選手さえ良ければ私の専属シェフになって欲しいくらいです!」
「あ、ありがとうございます」
「そして毎晩、愛を囁きながら食べさせて欲しい……」
「え……は?」
斜め上を行くアマスの言葉に理解が追い付かない。隣に座っていたホークスがそっと声をかけたる。
「あ、アマスさん。よだれ……」
「おっと失礼」
アマスは「じゅるっ」と音を立て、その端正な顔には似合わない方法でよだれを吸い上げて何事もなかったかのように大人しく押し黙った。ふとミリアの方を見ると、彼女もまた「ああ、いつもの病気か」と言わんばかりに少々呆れている。ウララも続けて良いか分かりかねていたが、とりあえず先を急ぐことにした。
「さ、さあ。ツィーダ教授はいかがでしたか?」
「ええ、本当に食べ終えるのが惜しくなる上品な味わいでした。そして私の想像の遥か上を行くタレの味と魚のベストコンビネーション。これほどの物は人生でそうそう何度も出会える事はないでしょう」
教授による称誉の言葉にまたしても会場は大きくどよめいた。
魚料理が下げられ、続いて――。
「さあ、お次はヌデロ・トリティカ選手の~? そう、スタージョだー!!
まあ、ていうかぶっちゃけパスタよねこれ……スタージョって言うのね。
さてさて、スタージョ? これって大体どこで食べても普通に美味しいですからね。
いかがでしょう、ツィーダ教授?」
「調理途中からただのスタージョではないと思っていましたが、まさかここまで芳醇な香りを引き延ばして来るとは、もはや芸術です。何よりかけられたホワイトソースに決して引けを取らないばかりか、両者が合わさっても嫌な思いは一つとして無い。下手な料理人であれば互いの匂いを喧嘩させてしまいます」
「はい、ホワイトソースに助けられましたね!」
ホークスがもう苦笑いで突っ込む。
「どこをどう解釈したらそうなるんだよ!」
そして例のごとく何ということなくヌデロ選手の元へインタビューしに歩いていくウララ。
「ヌデロ選手、ホワイトソースにした理由とかあったりします? 私どっちかと言うとミート派なんですよ」
恰幅の良い初老のシェフ、ヌデロ選手は最初呆れて物も言うのを躊躇ったが、仕方なく口を開いた。
「……ワシはもう、料理云々よりお前さんの先行きが心配だが……良いだろう。折角のアピールタイムだ。
ご存じの通りスドー地方から取り寄せた小麦で練られたスタージョに、このホワイトソースも大まかなベースは小麦で出来ている。但し、北はグランダーロ周辺で採れた小麦との品種改良で、私が個人的に契約している農家との共同開発から生まれた特別な小麦だ」
「へー……何かもの凄いこだわり様ですが、そこまでの違いが出るのかどうか。こう見えてもスタージョにはちょいとうるさいんですよ私」
もうここまで来ると、フォルターを除く会場の人間全員の意見は満場一致していた。
「(どの口が言うんだ……)」
ホークスも自分がこんなやつに転生させられたかと思うと、もう情けないやら悲しいやら複雑な気持ちになりつつ、とりあえずスタージョを口に運ぶ。
「?!?!」
だが運ぶや否や、その味は彼を絶望の淵から希望に引っ張り上げる。それだけの力があったのを感じずにはいられなかった。周囲を天使たちがラッパを吹きながら舞いを踊っている気がする。この味にはウララも大満足だったようで。
「うまーい! やっぱりスタージョってどれ食べても美味しいわね!
ね? ホークスもそう思うでしょ?!」
「うるせえよ、この味音痴が! 美味いの一言で済ませられる味じゃないだろコレ!
本当に同じ小麦同士の味付けなのか? もちろんシーフードも入ってるからそれだけじゃないのは分かってるんだけど、なんて言うかまったくの別物だ。もちもちとしたスタージョの麺がホワイトソースを捕まえて離さない、かと言って互いを邪魔しないこの触感は凄い……凄すぎる!
ヌデロさん、俺、今とっても幸せな気分です」
「おお、そこまで気に入ってくれたか。ワシも嬉しいぞ」
全部食べてはこの後の審査にも影響しそうだが、なかなか止めることが出来ない。そんな気持ちを必死に押し殺し、ウララが続ける。そこだけは素直に偉いなと、ホークスは感心した。
「……ツィーダ教授はいかがでしたか?」
「香り、味は最早言うまでもなく、程よい弾力の麺と滑らかなソースの織り成すハーモニーは天にも昇る気持ちその物。スタージョは確かに庶民的な食べ物ですが、これはそうした世界の常識を完全に覆す逸品に他なりません」
会場中に広がる香りが教授の言葉を更に裏付ける。誰もが唾を飲み込みいつか自分も食べてみたいと胸を膨らませた。
そして満を持して登場する――。
「四つ目にしてようやく真打の出番がここに! メインディッシュであることに誰が疑いを持つ?! いいや、持たないね!!
ヴィアン・ド・カルーノ選手が放つ肉料理のご登場だー!!」
熱々の鉄板の上に乗せられた肉料理が、「ジュージュー」と音を立てながら各人の前にやってくる。これまで散々食べてきたが、それでもこの料理を前に誰しも食欲を掻き立てられていた。
「さあさあ! もう今回の料理バトル大会はこの為にあったと言っても過言ではありませんが、いかがでしょう、ツィーダ教授?」
ウララのご贔屓ばっちりの振りにも関わらず、ツィーダ教授は顔色一つ変えずに料理を評する。
「見た目の迫力は言わずもがな、ダージュの肉の鉄板焼きとは恐れ入ります。学生食堂にとって肉料理というだけで大きなアドバンテージがあるはずなのに決して力を抜くことは無い。そればかりか全力で立ち向かう姿勢にこそ、この料理の本質が隠れている気がします」
「ですよね! 肉料理、最高ですよね! 優勝です!」
そして突っ込むのもそろそろ板についてきたホークス。
「偏向実況もここまでくると清々しいな、おい!」
これまでにない勢いでヴィアン選手の前に来るウララ。
「ヴィアン選手! 早く食べたいので手短にお願いします!!」
と、話を振られたヴィアン選手は、豪快な肉料理を作っているとは思えない程気弱な性格の男だった。体こそどのシェフよりも大きいが、小さく縮こまっている。
「あ、あの……オレ――」
「貴重なご意見ありがとうございました! いただきます!!」
そう言うが早い。ウララは一目散に席に戻り鉄板焼きを大口開けて食べ始める。もう実況どころではなかった。
「せめてちゃんと実況しろよ……」
そう言いながら、ホークスも食べたくて仕方がなかった。目の前の肉に食らいつくようにして食べ始めた。
「……来た……やばい、なんだこれ……」
それは今まで食べてきたどんな肉料理よりも美味しい代物だった。ホークスの食が進む。
ウララもウララで、そろそろフォルターにインタビューをする頃合いだったがそんな事はすっかり忘れていた。
しかしフォルターがそれを気にする様子もなく……
「ああ、ウララさん。そんなに一生懸命食べている君も美しい……君の姿をおかずに、俺様は何杯だって皿を平らげてみせよう……」
皆が皆職務を放棄してしまった状態で、ヴィアンが言う。
「あ、あの……オレ――」
しかし誰も聞いていなかった……それだけ彼の料理が美味しかったという証明でもあるのだが。
そして最速で食べ終えたウララ。
「もうこれが優勝ですが、ツィーダ教授はいかがでしたか?」
「一般的なダージュの肉を使って、敢えて家庭的な味を目指しながら鉄板焼きに落とし込んだ。彼はとんだ策士です。そして学生諸君に必要不可欠なスタミナをこれでもかと畳みかける。やっていることは実に悪魔的と言うに等しく、魔族のそれと遜色は無いでしょう。ヴィアン選手が我々人類側だったことが唯一の救いです」
会場中から、自然とヴィアンコールが沸き上がるのにそう時間はかからなかった――。
先陣を切ってヴィアンコールを行っていたウララの気が済んだ頃、最後の皿が運ばれてくる。
「げっぷ……えー、宴も竹縄ではございますが、デザートは別腹!
ミルチャ・ドルチャ選手による本日最後の一品の登場です!
いかがでしょう、ツィーダ教授?」
目の前に現れたデザートはいわゆるパンナコッタのようなクリーム系のスイーツだった。
「まさかここに来てこのような仕打ち……生クリームを見て完全に誤解していました。
てっきり気合の入った重たいケーキが出てくるものかと。
しかしどうでしょう。この透き通るような光り輝く美しきクリームをまといしゼラチンの使者ときたら……
先ほどヴィアン選手を策士と称しましたが、彼が策士ならば彼女は全てを見透かした上でこれまでの選手たちを手玉にとった神に等しき存在。
見ただけでも分かります。数多の苛烈極まりない料理と言う戦場を潜り抜けてきた胃を包み込む女神。これはのど越しに優しい、するりと食べられてしまうデザートなのだと。
そう、むしろこれまでの料理があったからこそより輝く一品です」
「ごくり……」
余計な言葉はいらなかった。圧倒的なスイーツという存在に誰もが目を奪われてしまっている。
席から立つこともなく、ウララがミルチャ選手に一応尋ねた。
「み、ミルチャ選手。こちらのデザートの解説をお願いしてもよろしいでしょうか」
「はい、プリコクレーモのフラー添えです。教授にほとんど言われてしまったので私から特に言う事はありませんが、程よく冷やされたそちらのデザートが、疲れた胃を少しでも癒してくれると思います」
もう誰にも言葉はいらなかった。大人しく出されたデザートを食す一同。
形式上表投票が行われ、各々が選手の名前を書いた用紙をウララの元に提出する。
そしてウララがゆっくりと立ち上がり、一枚ずつ読み上げていく。
「投票用紙に書かれた名前を発表します。
ミルチャ選手……ミルチャ選手……ミルチャ選手……ミルチャ選手……ミルチャ選手……ウララ様……」
ウララに票を入れたのは無論フォルターだったが、華麗にスルーされる。
「以上、最も票を獲得されたミルチャ・ドルチャ選手が第一回学生食堂料理バトル大会優勝者となります。
おめでとうございました!」
場内を溢れんばかりの拍手が鳴り響き、こうして無事、第一回学生食堂料理バトル大会は閉幕することになった――。
翌日――。
「ったく、お前のあの実況は何だったんだよ。とりあえず無事終わって一応食堂は再開するようになったから良いようなものの……」
ウララは校舎の渡り廊下を歩きながらホークスに怒られていた。一緒にネーテとエマも歩いている。
「なによ! 私だって一生懸命やったんだから、誉めてくれたって良いじゃない!」
「と、とりあえずこうしてお昼に困らなくなったのは良い事ですわ」
ネーテが何とか取り持とうとする。
「そうですね。一時はどうなるかと思いましたが、何はともあれウララさんの尽力も役に立ったのは事実でしょうし」
エマもさすがに可哀そうに思ったのかウララを庇った。
「皆の優しさが何だろう、辛い気がする――って、あら? また食堂の入り口が何か騒がしいわね。もうストライキは解消しているはずだけど」
見ればウララの言う通り食堂の入り口にはまた、以前と変わらぬ人だかりが出来ており、何やら集まった生徒たちから不満の声が聞こえてくる。そんなこんなで中に入ることが出来ないばかりか前が見えない状態になっていた。
「どうしたんだ? 食堂は再開したんじゃなかったのか?」
と、そこへ生徒会長のミリアが四つん這いになって人ごみの足元をかき分けて現れる。
「ぷはぁ! やっと出られたわ……」
「あ、会長。と、アマスさんも――」
ミリアの後ろからアマスも匍匐前進で現れた。やはり鼻血を流しながら……ホークスはデジャブを感じながらも見て見ぬふりをすることにした。
アマスは体を払いながら立ち上がると、ミリアが鼻血に気が付いた。
「あら? アマス、また鼻血が――」
はっとしたアマスは目にもとまらぬ速さでハンカチでふき取るとあくまで平静を装う。
「私の顔に何か?」
「い、いえ……見間違いだったみたい」
「そうですか。おや? 何だ、ホークス君たち。いつも仲が良いわね。見ての通り食堂は使えないわ」
「どういう事だよちびっこ会長。食堂は問題なくなったはずだろ?」
空腹が解消されるはずだと思って来てみればこの騒ぎ。不満の一つも言いたくなる。
ミリアも腕を組んで真剣に考え始める。
「そうね、事態は思った以上に深刻よ」
ホークスの横に立っていたネーテが心配そうに尋ねた。
「ま、また大変なことが起こっていますの?」
「いったい食堂で何が……」
エマも空腹ではさすがにたまらなかった。ミリアが話を続ける。
「たしかに、ホークス君の発案により目論見通りに事は運びました」
「なら良かったんじゃないのか?」
「良かった……のかなあ……」
考え込んでしまったミリアに対してアマスが代わりに答えることにした。
「それが、今度は逆に大人気になりすぎてしまいまして。
現在整理券も配布したのですが、この様子ですと今からでは入場まで二時間は待たないとダメね」
「に、二時間ー?! 昼休み一時間しかないっての! 終わるわ!
なんてこった……」
こんなはずではなかったと肩を落とすホークス。ウララも同じくがっかりした。
「やりすぎちゃったのね……人類にスパチャシステムは早すぎたんだわ――」
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