17・マリ あれから・・・遠いところで


 他の人はどうかは知らないが、初めてのキスをした人の事だけは、私はどうしても忘れられない。


 あれから、5年がたった。今の時代、SNSがあれば、そして向うもSNSをしていれば簡単に相手の近況が分ったりする。それは良いのか悪いのか。

 私だけなのかもしれないけど、初めて好きになった人の近況をどうしても覗いてしまうのだった。

だから、汐里くんが、どんな学校を卒業してとか、どこに就職してとか、そういった事はすべて(向うがSNSに載せている範囲だが)分かっているのだった。


 私が一方的に汐里くんの事を見ているせいで、私はたとえ汐里くんに人生で再会する事になっても、会話できるような気がしていた。


 でもできない。


 汐里くんと会った最後の日・・・キスをした。一緒にいたい、汐里くんはそう言ってくれたが、私は逃げ出してしまった。


 私が、私自身をさらけ出すのが怖かったからだ。汐里くんは一緒にいたいです、そう言ってくれたのに、私は汐里くんに嫌われる事を考えてしまい、遠くに行ってしまった。


 あれから、試すように、機会があれば男の人と食事にいったり、付き合ったりしてみた。汐里くんとはできなかった事が、他の男の人とは出来た・・・。それは驚きだったが、どうもこうにも、長続きはしなかった。


 でも、私は私の居場所を見つけたので、満足をしている。 そんな満足した日常のなか、まさか汐里くんと再会するなんて思ってもみなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る