14話 汐里くん、本当の気持ちに気付いた時

僕は何をしているのか。

マリの気持ちも分からないのに。こんな事をするなんて。

それでも。

マリの頬、頬にかかったマリの髪。幼い時からかわってないマリの匂いと、シャンプーが混ざった匂い。

ずっとこうしていたかった。

一瞬、付き合ってる彼女の顔が頭をよぎったが、すぐに消えた。そして、僕はやっとキスをやめた。経験はないが、これ以上続けると、止められなくなりそうだった。


キスを終えたマリは、すっ・・・と僕から離れて立ち上がり、背中を向けた。

「・・・・。」

僕は、マリが背中を向けないで居てくれる事を、期待していたのに。

僕の上半身に、キスした時のマリの触れた部分がとても熱かった。

が、対象的にマリの表情は違っていた。

マリは冷蔵庫から水を取り出しごくごく飲んだ。そして僕の目を見つめていた。マリは、冷静な顔をしていた。適当な嘘はつけない。許さない。そんな目をしていた。

嘘なんてつくつもりなんて、さらさらなかったけれど。

その場しのぎの対応じゃあ、この子はもう、僕の目の前からいなくなってしまう。そう思わせた。

「どうしたいの?。」

マリが聞く。マリは、僕に彼女がいた事を知っていた。

「おれは・・・続けたいと思っている。マリと。」

切実に、慎重に、言葉を選ぶ。

「・・・ずっと・・・・・。」

好きだった。付き合って、、

どの言葉を選んでも、どこか嘘っぽい。

「俺は・・・・。マリと、付き合って欲しい。」

嘘っぽくても。本心だった。言うしかなかった。

「考えといて・・ほしいです。」

僕は、言葉を選び・・・切実に伝えるしかなかった。

彼女がいる事についても、曖昧にはできない。それはもちろん。

「・・・・また、会って欲しい。」

毎日会える関係なのに、僕はこう言っていた。

「次は、ちゃんとした時に。」

そういって、僕は外に出た。

普段、キスした後なんて、どう過ごしていたのか。まったく僕は分からなかった。

そういうときは、何も考えずに過ごしていたはずなのに、相手がマリだと、どうしていいか分からない。

こんな事は初めてだった。

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