10 本当の理由 マリの心
「足が痛かったから。最近歩いてたから。願掛けに。」
マリは言った。そういえば、ドラマではだしで神社を歩く願掛けを見たことがある。
「なんで、宝くじ当たりたいの?。大金が必要なのか?。」
だからと言って、自分が大金を貸してあげれる立場ではなかった。
「・・・手術したいのよ。」
マリは小さな声で言った。
僕は思わず、え、と聞き返していた。
「手術・・・したいと思ったの!!。」
二度と言いたくないらしい。
「なんで・・・?手術って。お前まさか・・・。」
一瞬最近、癌で亡くなったとても若い親戚が頭をよぎった。
「違うよ。」
マリはうつむいたまま言った。
「整形とか・・・。」
がん、とか整形とか、デリカシーがなかった。すごく申しわけない気持ちになった。マリが許してくれるなら、僕は土下座したい気持ちもあった。
マリは、たぶん、ずっとひとりで苦しんできた。
どうして僕は、大丈夫。
マリはそのままで、そのままがいい。と言ってあげたかったし、本心だった。
でも、言えなかった。
「・・・。」
マリの小さな目から、ぽろりと涙が溢れてきた。
その落ちてくる涙が、マリの心が落ちるように思えて。聞こえるように悪口を言われても表情ひとつ変えないマリの裏の顔を見た気がして。
僕は思わずその涙に触れていた。そして。
「・・・・。」
そのまま、マリの頬に手を添え、キスをしていた。
小さいとき、マリはよくブスだと言われて泣いていた。こんなわたしとだれもけっこんしてくれない、すきになってくれない。
というのであった。でも、そんなことは絶対にない。
唇を通して、マリの戸惑いが伝わってきた。でも、もう離したくなかった。
僕は、何年もマリといて、初めて、マリのことを抱きしめた。
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