9・本当の理由

 じゃあ僕はこれでという気になれなかった。

僕から封筒と荷物を受け取ったマリは、ものすごい速さでテーブルにその荷物を置き、封筒の中身を確認していた。宝くじと、封筒の裏にピンク色の付箋が貼ってあった。

『中身は見なかった事にしています。大切なものを公共の場所へ保管するのは辞めましょう。水谷』

水谷先生とは、カウンセリングの先生で、写真部の顧問でもある。大切なものだと分かるなら、マリが直接学校に来たときに渡してやればいいのに、水谷先生はどこか抜けているのか。僕の気持ちを知っていてやっているのか。

「・・・俺も見なかった事にするから、大丈夫だよ。」

本当に、マリの宝くじには興味は無かった。当たったら分け前くれという気持ちも無かった。(というより当たらないに決まっている!!)それだけは分かって欲しかった。

大金欲しいって、なんで宝くじなんて買ったの。というか、お前どうして3日も学校休んでるんだよ。色々聞きたい事はあったが、僕は黙ってしまった。

マリはどうして、こんなに思い詰めた感じなのか。何も聞いてやらないでいるのが優しさだと思うときもある。しかし、今聞いておかないとマリは何も言わないままどこかへ行ってしまうし、学校ではなかなか二人きりになる機会がない。

「・・・・なんで学校休んでるの。」

僕はやっと、こう聞いた。

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