5・夢、そして現実

 心ここにあらず。

すぐにそうなってしまうのは私の悪い癖だった。

すぐに現実逃避をしてしまうのだ。親が厳しくて説教が長いせいでできた癖なのかもしれない。お説教されていると特に私の頭は、どこかにワープしてしまい、まったく違う事を考えてしまっている。ひどい時は思い出し笑いをしてしまう。「笑っちゃダメな時に笑っちゃう」タイプの人はきっとその仕組みで笑ってる人もいると思う。

「仲里さん!!!。」

名前を呼ばれて、私ははいっと私なりに真面目な顔をした。

「どうして昨日視聴覚室の掃除に来なかったのですか。鈴木さんと、寺西さんと、志田さんしか来なかったのよ。」

残り二人は私と、西田さんだった。西田さんは私より前に呼ばれていた。

私は真面目なので、掃除をサボった記憶などない。真面目というより先生に怒られるのが面倒くさいのだ。ただ、掃除の所を教室だと思って教室の掃除をしていたのだった。教室の掃除は3グループで掃除するため同じグループの人もそこにいると思ったのである。西田さんもそこにいたし。

しかし、怖い。この先生の目が怖すぎる。そんな言い訳を言ったところで、その目線をやめてくれるとは思えなかった。

「教室の掃除だと思っていました・・・。」

私はやっとそう言った。先生の目が緩んだ。

「そう。」

「ところで。」

「あなた、最近いじめられてたりしないの?。」

はい?。

「・・・昨日あなたがいない時に、西田さんたちが言っていたから。」

何を言ったんだろう?。気になるところだったが、私は口を閉じてしまった。例えば、鈴木さんに仲里さんあれ取ってきて~!シャーペンの芯ちょうだい!。そう言われて、あげたら、「ほら、この子なんでも私の言う事きくでしょ?。」とあざ笑うように言われたり、西田さんは、私が寺西さんや、高野さんと話しているとかならずその輪の中に接近し、気が付くと私は疎外され、私はそっとその場を離れるしかないのであった。西田さんと、鈴木さんのどちらかが休んでいると、私はとても安心した気持ちになれるのであった。

これは私がクラスになじんでないだけの問題なのかそれとも。

「・・・いいえ。」

私はこう言った。別に私は悩んでいないし、どうせ宝くじが当たるのだから。

この夢があれば、そんな事。

本当に心からそう思えるのであった。

「私いじめられてないし、毎日楽しく学校行ってますよ。」

そう・・・と、先生はペンを置いた。顔はまだ不安げな表情なままだったが、別に私が嫌に思っている事を先生に話す気にはなれなかった。


宝くじを買った事で、気持ちが10段くらい高揚している気分であった。


さて、今日はどんな願掛けをしよう。

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