3・恋心
汐里くんの背中に触れないように、ずり落ちているジャケットをかけてやった。
汐里くんと私は、幼稚園の頃とても仲良しだった。毎日園庭で遊んだし、母親同士が仲が良かったせいか幼稚園が無い日も遠くに遊びに行った事もあった。中学校で同じクラスにはならずいったん離れたものの、高校に入ってからのクラスは一緒で、どちらともなくお互いなんとなく話していた。
おさなじみと言えば少女少年の恋愛漫画では初恋だったりするが、汐里くんは全くそんな事はないのだった。一度はっきり言われてしまった。
「はっきり言って、この学校の女には興味が無い。」
こっちだってどうも思ってないわ!と言ってやりたい言い方だったが、これで分かってしまった。私は彼に恋をしている。確信した。
そして、彼にこの気持ちを悟られないようにしなければいけない、と思った。
私はたぶん、彼以外の人を好きになる事はこれから先、一生ないのだから。
私がああ言われた直後、あ~はいはい、と流すように言ったおかげで、こうして同じ部活動ができているのだ。こんな想いを抱いているのは私だけだ。きっと。
むかつくくらい長い汐里くんのまつ毛を見ながら、私は部室を後にした。
彼には大切にしている彼女がいるのだ。その彼女も彼を大好きで、彼の寝顔をこれ以上見てはいけない気がした。
買った宝くじは、私だけが使っているロッカーの引き出しに入れ、鍵をかける事を忘れなかった。
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