第40話
ネズミがあとから姿を見せたのは、遅れて来たのではなくて金太がわざと30分時間をずらしたためだった。
「そいで、花壇はなおったの?」
アイコは金太たちが遅れたこと気にする様子もなく訊いた。
「ああ、もう大丈夫だ。ところで、きょうみんなに集まってもらったのは、じつはこの畑なんだけど、家の都合で不動産屋に手放すことになって、ついてはこの小屋も撤去されることになった。
この小屋はみんなの思い出が詰め込まれているんだけど、こればっかはどうしようもないんだ。だからきょうはこの小屋をみんなで片づけようと思って……」
金太は、諦め切れないといった顔でみんなに説明する。
「ええッ!」
突然の報告にみんなは、コーラスのように揃って感嘆の声を上げる。
「ほんとなの?」
ネズミが缶コーヒーを飲む手を止めて訊く。
「ああ、嘘なんかじゃない」
「じゃあ、こうしたらどうかなァ。この小屋をこのまま移動させるっていうのは?」
デーモンが奇妙な提案を持ち出す。
「移動?」と金太。
「この小屋をバラして、ボクの家の庭に組み立て直っていうのはどうかな」
デーモンは真顔で移動説を唱える。
「それはだめだよ。だって、ここは自由に出入できるからいいんだ。キミの家の庭にあったら勝手に入ることはできないじゃないか」
金太は笑いながらいった。
「確かにそうなんだけど、みんなのいろんな思いが入ってる小屋だから、取り壊してしまうのも寂しくないか?」
「デーモンはいいかもしれないけど、汚い小屋を持ち込んだら、お爺ちゃんたち家の人が嫌がるに決まってる。それにこんなちっぽけな小屋だけど、分解してしたら以外に材木の量が多いから、そう簡単には運べない」
金太はデーモンの提案に一瞬その気になったのだが、自分の気持ちを振り切るようにしていった。
「で、どうするの?」
アイコは躰が冷えて来たので、早く結論が聞きたかった。
「うん、そいでこの小屋のなかに置いてあるものを持ち出さないといけないから、自分が持って来た物を片づけて欲しい。といっても量があるのはオレとノッポの持って来たマンガの本くらいで、あとは小物だからそんなに時間はかからない」
金太は、棚の上にあった金属製の菓子箱を下ろして蓋を開けると、「ロビン秘密結社」の宣誓書のほかに、金太の持って来た古い万年筆、ノッポの持って来たジッポーのライター、アイコのヘアークリップ、ネズミの魚釣りの小さなリールが現れた。
そして金太は、思い出の携帯電話は大事そうにポケットに忍び込ませた。
これらすべてがそれぞれ大切にしてきた宝物なのだ。あとは金太の釣り竿と「名探偵 コナン」の本とノッポの「金田一少年の事件簿」くらいだ。
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