第21話 盗賊全員、素手でやっつけちゃいます!

 

 五人が同時に、悶絶して倒れる。


 反撃がバレた。弓兵が、こちらを狙う。


「ソランジュさん!」


 わたしが頼む前に、ソランジュさんはことを済ませていた。弓が、見えない壁に弾かれる。ソランジュが馬車の周辺に、魔法の障壁を張ったのだ。


 これで、誰も巻き込まなくて済む。


「リッコ、乗客の守護は任せろ。お前は盗賊を始末するんだ。遠慮はいらん。が、なるべく素手で全滅させろ」


 子どもたちに、ソランジュさんは毛布をかぶせいている。「思い切ってやれ」という合図だ。


「はい!」


 丸腰のわたしは、徒手空拳で五〇人の盗賊を相手する。


「なんだとぉ?」


「相手は女一人だ! 囲んでひん剥いてやれ! 俺たちに逆らったことを、たっぷりかわいがってから後悔させてやるんだ!」


 野盗たちは、わたしを凌辱する気だろう。


「そういう戦いに、なればいいですけどね」


「んだ――」


 わたしは、野盗の顔に裏拳を浴びせた。


 それだけで、野盗の首が折れる。


「ふざけやが――っ痛ぇ!?」


 後ろにいた盗賊の太ももを踏みつけて、粉砕した。


 その反動で、わたしは跳躍する。そのまま空気を蹴って、急降下する。


 下にいた三人の野盗が、回し蹴りの餌食になった。


 着地の衝撃波で浮いた盗賊たちを、さらに蹴り飛ばす。


 木の枝で一回転してからの蹴り、拳、投げ。武装した相手は、武器を奪って無力化した。


 再び、弓兵が矢を放ってくる。


「五〇人もいて、こんな力しかないんですか?」


「な……調子に乗りやがって!」


 木の上にいた奴らが、一斉に弓を引く。


 軌道を読んだわたしは、雨のように振ってきた矢をすべて蹴り飛ばす。打ち返した矢を、今度は相手に返す。弓兵たちの肩や頭にに、矢が突き刺さった。


 持ちこたえた弓兵は、登っている木を蹴って落っことす。受け身を取らせないよう、落下と同じタイミングで腹に一撃を食らわす。


「なんだ、あのヤロウ。丸腰なのになんであんなにも?」


 盗賊の頭目が、ソランジュさんに問いかけた。


「知らないのか。アレがモンクのスキルだ」


無手勝むてかつ』とは、「装備している武器と同じ攻撃力を、素手で相手に与える」スキルである。


 わたしは、聖剣と同じダメージを、徒手空拳で相手に与えていた。


「このスキルを用いるケースは二つだ。殺生したくないが、武器がなければ勝つのが難しい相手と戦うためが一つ。もう一つは……殺してもいいヤツらを相手にするときだ」


 ソランジュさんが、頭目を脅す。


 頭目以外の盗賊を、わたしはすべて無力化し終える。


「最後は、あなただけです」


 わたしは、頭目を指さした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る