第22話 わたしのサブジョブはモンクです。

「しゃらくせえ、メスガキが!」


 頭目が、蛮刀を振り回しながら襲いかかる。


 なんてノロい攻撃だ。目を閉じていても避けられる。


「リッコ、遊んでいないで仕留めろ。街へ着くのが遅くなる」


「はい!」


 太刀筋を見極めるまでもない。わたしはパンチで刀を粉砕した。そのまま頭目の顔面を打ち抜く。それだけで、盗賊団は全滅した。


「積み荷もすべて無事だ。汗一つかかず撃退とは。お見事」


 ソランジュさんが、手を叩く。


「心臓に悪いですよ。丸腰で戦えと言われたときは、どうしようかと思いました」


「といっても、サブジョブはモンクだろ?」


「よく分かりましたね」


 冒険者にはメイン職業の他にサブジョブを会得している場合が多い。魔王が消え去り、人間同士の争いも鎮静化している今の世では、戦闘職だけではやっていけないからだ。


 リッコは金策のために、素手でも戦える「モンク」という職を取っていた。ヒール魔法もこなせるので、前衛が必要ないパーティでも役に立てるかと思ったのである。


 胸を押さえ、わたしは息を整えた。


「盗賊団ごとき、話にならんと思ったんでね。私のフォローも必要なかったくらいだ」


 ソランジュさんが、転がっている盗賊団を見下ろす。


「役所に突き出さなくても、いいですかね?」


 アジトを聞き出すとか、バックに誰がいるか、聞き出す必要があるかもと思ったが。


「どうせコイツらは、何も知らされておらん。雇った側も、野盗どもを扱うリスクを心得ているさ。しかもクテイは、盗人に厳しい。盗賊どもを生かして連行しても、無事では済むまい」


 なら、クテイの手間を省いてやろうと、ソランジュさんは語る。


 他の客たちから感謝されつつ、馬車へ戻った。


「次からは、普通に戦いますね。わたしの強さを知りたかっただけでしょ?」


「どこまでやれるのか、試したかった。想像以上で驚いているが」


「無茶ぶりすぎですっ」


 反論するが、ソランジュさんはどこ吹く風だ。


「魔物も出る可能性だってあるんだ。自分がどこまでやれるの把握しておいてもらわないと、私だけではカバーしきれない」


「そうですね。どんな規模なのかも分からないですから」


「それと、ようやく確信が持てた。キミが、ショーナ・ドッコイの弟子だとな」


「よくご存じですね!」


 ソランジュさんの言うとおり、わたしの師はショーナ・ドッコイだ。


「彼女も『無手勝』のスキル持ちだ。相当鍛えられたな」


「はい。鎧を着たマーシャルアーツは、どのような戦局にも対応できるからと。聖剣はもっっぱら、霊体やスライムなどの不定形対応用ですね」


 未だ、そのような難敵には遭遇したことはないが。


「ともあれ、あそこがクテイだ」


 ソランジュさんが、夕日に照らされてオレンジに輝く街を指す。


 赤い屋根が連なる街が、クテイだと。

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