第11話 魔女さんが冒険者に復帰です!

 気がつけば、わたしはワーンスの街にある冒険者ギルドの前に戻ってきた。

 転移魔法って、ほんとにあるんだなぁ。


「おお、リッコちゃん。魔女様もいるじゃないか」


 先ほど森にいた、ヒゲ商人さんと鉢合わせた。


「リッコちゃんを一人置いて来ちまったから、早く行かねばと思ってね。って、リッコちゃんは魔女様に会えたんだな?」


 ヒゲ冒険者が、リッコを見つけて驚く。


「えへへ。帰ってきました。足の具合はもういいんですか? わたし、毒の治療までは不可能だったので」


「へん、この通りさ」


 ヒゲが、足をポンと叩く。治療院で足を看てもらい、後遺症がないか確認してもらったあとだそうだ。複数の仲間を伴って、今から山狩りを行うところだったという。


「リッコちゃんも、無事で何よりだ。悪かったな」


「平気です。そちらもお元気そうで」


 挨拶も済み、ソランジュさんが慰謝料として追加報酬を払おうとする。


「いらないよ。リッコちゃんを置いてきた迷惑料として、取っておいてくれ」


 ヒゲ商人さんは、届け物の報酬以外は受け取らなかった。


「悪いね。ウチのペットがケガをさせたのに」


「いいってことよ。魔女様の戦闘スタイルを拝めたってだけで、自慢できらあ」


 ヒゲさんのパーティは、別の依頼をこのメンバーで受けるという。


「嬢ちゃんも来るかい……って言っても、魔女様のパーティなんだよな」


「はい。実は」


「また会うことがあったら、声をかけてくれ。またな」


 ヒゲさんたちは、平野の方へと消えていく。


 入れ替わりで、わたしとソランジュさんはギルドへ。


「これはこれは、魔女ソランジュ様。またご依頼ですか?」


 珍しい物を見る目で、ウサミミ受付嬢がソランジュさんに尋ねる。


「いや、街を離れようと思ってな」


「おおっ、魔女様が冒険者稼業に復帰ですか」 


「私の冒険者登録は、まだ生きているか?」


「もちろん!」


 受付嬢が、サムズアップで答えた。


「魔女様宛ての依頼が、これだけあったんですよ?」


 カウンターの奥からは、木箱に入った依頼書の山が。


「冒険者が来る度に、その場で焼いていたからな」


「ひどいですよー。この依頼、ほとんどリッコさんが代わりに受けていたんですから!」


「なんと、リッコが」


 実は、そうなのだ。誰も引き受けたがらない高難度のミッションを、わたしは一人で請け負っていた。もし断られたら、この人たちは苦しんでいるに違いない。そんな考えから。


「簡単な依頼ばっかりでしたよ。報酬も現物ばかりで、どうしようかと悩んでいたんですが、こちらも生活のために、使っちゃいました」


 ちなみに、ソランジュさんが受け取るはずだった報酬は、九割がわたしの装備品になっている。


「構わんよ。ほっぽり出した私が悪いんだから。ありがとう、リッコ」


「えへへ。どういたしまして」


 わたしは頭をかく。


「では、残りの依頼はこっちで片付けるから」


「お願いしますよ。これからはちゃんと依頼を受諾してくださいっ」


「考えておくよ」


「もうっ、ホントですよ。行ってらっしゃい」


 受付嬢に手を振り、ソランジュさんはギルドを出ていく。わたしは早足で、ソランジュさんの後に付いていった。


「これからどこへ?」


「まずは、キミの身なりを整える。街中でもアーマー姿では、さすがに近寄りがたいからね」


「えー。これの方が落ち着くのですよ」


 ヨロイは頭までカバーしている。他人と視線を合わせなくていいからだ。


「もっと人に慣れろ。このままでは、私のように引きこもることになる。イヤだろ」


「確かに。わたし、やってみます」


「手頃な服屋がある。行ってみよう」

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