第9話 魔女さんと、パーティを組みました!
さっきまでウキウキ顔だったソランジュさんの瞳が、細くなる。
「ある意味で、身体の方を要求してきたな」
「そんな語弊のある言い方しないで」
「パーティを組むのではなく、お友達になれと?」
「魔女さんとパーティを組むなんて、おこがましくて。まずは、お友達から」
ポツリと、わたしはつぶやいた。
「残念だが、断る」
「秒で断られました!」
そんなー。
「私は一人が気楽なんだ。特定の友人は作らないようにしている。知り合いも、あのハゲだけじゃないが、特に親しいわけじゃない」
「そうですか。申し訳ありません」
わたしはヨロイを付けて、退散しようとした。
「待て待て。その代わり、この手のフレンドなら大歓迎だ」
ソランジュさんが、後ろからわたしを抱きしめる。そんなに、わたしと肉体的接触がしたいの?
「お断りしますよ!」
「遠慮するな。魔王すら籠絡したテクニックを持っているぞ。お互い浮世を忘れて楽しもうではないか」
「なおさら遠慮させていただきます」
身をよじったわたしは、転びそうになる。
「おお、引き締まっている割に、立派なものを持っているじゃないか」
「ノーッ!」
わたしは、胸を触ってきたソランジュさんの手を払う。
アイテム袋から、魔獣の角が転げ落ちた。先ほど倒した魔獣のモノだ。
「ん? これは」
「ああ、それは依頼に出ていた『ヘルビースト亜種』の角です」
この間倒した、爬虫類のことである。
「知っている。私が依頼を出したんだからな」
証拠として、依頼書の写しを見せてもらった。ギルド掲示板に張られていたメモと同じだ。依頼人は【魔女】と書かれている。
「めったに姿を見せない激レアモンスターなんだが」
「森を突っ切って、街へ入り込もうとしたようなんです」
そう伝えると、ソランジュさんが目を丸くした。
「近くにいたのは知っていた。だが、亜種は珍しいのだ。森中探しても、顔を出さないことだってあるのに。見つけたとしても、数十人がかりでやっと倒せるくらいだぞ」
「一人で、やっつけました」
わたしが伝えると、ソランジュさんがわたしをじっと見ながら静止する。
「なんだって?」
なぜか、ソランジュさんが笑い出す。
「フン。世間を知らないってのは恐ろしいモノだね」
ソランジュさんは、クローゼットを開けた。
下着をつけかえ、紅い軍装と豪華な装飾が施された赤いロングコートを羽織る。
下には黒のミニスカートを履く。
足は黒のニーソックスとブーツで決めた。
頭に、虹色の羽根が付いた三角帽子を被る。
帽子もコート同様、紅葉の色だ。
「外出なさるんですか?」
「気が変わった。キミと友人になるつもりはないが、パーティは組んでやる」
「いいんですか?」
「ああ。それくらいしないと、釣り合わん。着替えたまえ。こちらも準備するから」
ようやく、わたしにも仲間ができたらしい。
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