第2話 パーティ入りは、お譲りします!

「おい、なんの音だ?」


 討伐隊の面々が、わたしに声をかけてきた。


 事情を説明すると、驚愕の声が上がる。


「アンタ、こんなバカでかい怪物を一発でやっつけたのか?」


 討伐隊のリーダーが、剣を納めてわたしに握手を求めてきた。


「あ、はいはい」


 恐る恐る、わたしも応じる。


聖騎士パラディンってのは、とんでもない力を持っているんだな」


「い、一匹だけだったので、よ、よかったです。で、でも、警戒した方が、いい、かも」


「すごいぜアンタ、よかったら、ウチのパーティに入らないか?」


 それはありがたい。パーティの空きを探していたところである。ようやくわたしも、ソロ狩りから卒業できそう? 


 でも、リーダーさんは剣士だ。前衛は、足りていそうなんだよなあ。


 一人のノーム少女が仲間になりたそうに、メガネ越しに、こちらをじっと見ている。出で立ちからして、僧侶だろう。僧侶の少女は、ノビている魔獣の素材を吟味しながら、こちらを気に掛けていた。


「そこのあなた、仲間になりたそうですね?」


 わたしは、少女僧侶に声をかける。


 オドオドしている様子から、自分と同じ「引っ込み事案体質」だと感じた。


「ああ。キミもすごかったな。初陣にしては助かったよ」


 リーダーも、彼女に助けられたらしい。


「でも、私は」


 少女は、戸惑っていた。


 仲間の枠は、あと一人なのである。


「この子を、入れてあげてください」


 わたしは、少女を推薦した。


「あの、そんな」


「いいんですいいんです! 一人旅には慣れていますから!」


 わたしは剣士パーティから距離を取る。


「本当にいいのですか? 聖騎士さん?」


「どうぞどうぞ。聖騎士は剣も回復も得意ですから、一人旅も何のそのです。でも、あなたは回復の要。パーティになくてはならない存在です。ね、リーダーさん?」


 剣士さんに確認を取って、少女の仲間入りを打診した。


「そうだな。たしかに回復職は欲しい。お願いするよ」


「ありがとうございます」


 晴れて僧侶は、パーティの一員に。


「では、すいません。パラディンさん」


「はい。またお会いしましょう」


 何度も頭を下げる少女に、わたしに手を振る。


「はあ……」


 少女を見送った後、わたしは大きくため息をつく。


 またしても、仲間を作り損ねた。


 あと一人で、満席だけだったのに。


 冒険者学校を卒業し、ワーンスの街に降り立ってから、もう一ヶ月になる。当初こそ、新天地で一花咲かせようと息巻いていた。が、出足でつまずいている。


 先ほどの一件といい、持ち前の「遠慮のカタマリ」が顔を出してしまう。おかげで、仲間集めは三五連敗中である。


 これでは、一生ソロ狩り人生だ。聖騎士は引く手あまただと思っていた。が、実際は一人でも旅ができる故に、仲間を必要としない。職業のチョイスに失敗したか。


「この森は強い魔物がいますし、ここでずっと、モンスターでも退治しましょうかね」


 ギルドに戻って、わたしはソロ狩り可能なミッションを探す。


「ああ、リッコ・タテバヤシさんですね。ちょどいいところに」


 ウサミミの受付嬢が、わたしに声をかけてきた。


 魔獣討伐の依頼を達成した報酬を受け取った後、さらなる依頼が舞い込んだ。


「実はですね。あなたが手に入れた魔獣の角を買い取りたいと、先ほど依頼がございました」


「そうなんですか? で、相手はどなたなのでしょう?」




「実は、『朱砂ソーマタージ・オブ・魔女シナバー』でして」



 さっき魔物を討伐した、『魔女の森』の主ではないか。


「しかも、直接持ってきていただきたいと、連絡が」


「魔女が、わたしに会いたがっているのですか?」


「おそらくは」


 それならば、向かうしかない。


 とはいっても、人と会うのって、苦手なんだよなあ。


「お値段交渉なら、商人さんを連れて行っても……って、ムリですぅ」


 ダメだ。その商人さんに、話しかけられないんだった。わたしは。


 一人で行くしか、ない。

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