第19話 アキの森
ドラゴンを倒したシキは生態系の頂点に到達した確信を得る。
つまり恐竜<ドラゴン<シキ。
だが、シキ=天球人。
すなわち対天球人という裏ボスが存在する。
シキは巨大化肥料のドーピングを止めて徐々に元のサイズに戻りつつ、
弟子になってくれる天球人を探しては武術を教えた。
体の大きさが元に戻り切ったころ、
どの弟子も武術を対小型動物用の護身術程度にしか考えていないとわかった。
恐竜やドラゴンと直接対決したいと思う者など居るわけもなく、
元々落とし穴で十分だった。
シキは稽古相手になり得る者を欲している。
しかし誰もそこまでの鍛錬を求めていない。
自分という最強の相手を越え続ける。
そんな永遠に続く武術家の境地に達している。
シキは繁殖する事を決意した。
■
繁殖は皆の賛成を得る必要がある。
無闇に増える事は森も家畜も途端に不足する事を皆知っていた。
「同じ森に住む天球人全員の賛成を必要とする」
遥か昔に『アキ』という天球人が皆を説得して決めたルールだった。
シキは森の皆一人一人を説得して回った。
意外と反対する者はいない。
現状資源に余裕がある事を皆知っているし、
繁殖に興味がある者も少ない。
豊かな森や家畜を殖やす方が先という考えが多かった。
繁殖など資源の無駄遣い程度にしか思っていない。
こうしてシキは自身が親木となりシシキを産んだ。
シキの親木はシキが戻ってこないので新たなシキを産んだ。
■
アキという天球人が最初に住み着いたので、
この森はアキの森と呼ばれている。
アキは哲学者気質で医者でもあった。
遠い昔、森にはアキ一人だったが、
繁殖したのか移住して来たのか、
今では複数人の天球人が住み着いている。
そしてある時、地球人マウが現れた。
ドラゴンを食べるエイリアン。
そいつは好奇心旺盛なミキ達と交流し、
シキと修行の日々を送るようになった。
さらに50年後、地球人と交信できる探査機が飛来した。
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