第11話 共球
マウがドラゴンの死体を処理していると、
天球人の方から接触してきた。
間近で見る天球人達は茶色い布をまとっている。
動物の毛皮ではない、おそらく植物性の繊維。
素肌は薄緑色をしている。
それ以外の見た目は地球人と同じ。
穏やかな表情で何かをしゃべっているが、
全く意味が分からなかった。
天球人の一人、水汲み担当だった『ミキ』がオルゴールのふたを開け、
音楽が流れる。
マウ「音楽」
ミキ「おんがく」
天球人たち「おんがく」
本格的な『共球』、凄まじい技術革新が始まった。
■
天球人は果物を主食としている。
森は果実が豊富にあり、食料には困っていなかった。
マウも果実を食べてみたが、
甘くも無く空腹は満たされない。
天球人のみ分解できる栄養素でもあるのだろうか。
緑の肌にも意味があるのだろう。
ともかく周辺の果実は腐りもせず、一年中採れた。
マウだけがドラゴンを狩り、焼いて食べる。
天球人が肉を食べても吐き戻すだけだった。
普通、地球人が素手でドラゴンを狩る事は出来ないが、
しかしマウはもう普通の地球人ではない。
それに宇宙船には武器が隠されている。
先の尖った合金パイプ。
それはわざと鋭利に作られており、
分解して取り外しても宇宙船の機能にほとんど支障が無い。
宇宙公社月光は秘密裏に、このような原始的な武器を仕込んでいた。
怪力を得たマウが使えばドラゴンに致命傷を与える事が出来る。
マウは地球との交信を忘れ、天球人との交流に勤しんだ。
■
地球との技術格差を埋める事、それが天球側の目標となる。
その為にまず言語が統一された。
天球人の子供はマウの学校で学び、
子供の内から仕事を始め、今まで無かった物を作る。
そして親になり、その子供がまた仕事に就く。
その中から天才的な者が現れ、
製鉄や蒸気機関の再現、
地球がたどった道をなぞる。
違うのは天球人の繁殖力の弱さと長寿。
そしてマウの不老長寿。
50年の歳月がたったが、マウはまだ若々しいままだった。
■
その間に地球で始まった戦争は一段落し、新たな天球探査ミッションが始まる。
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