第6話 進化でも発明でもない物
始めは大国の宇宙研究所だった『月光』だが、
不況と紛争で予算が少なくなったある時、
主なメンバーの半分が大国を捨て、
永世中立国の公社として分離独立した。
帰還不能の危険なミッションも、
いち早く実行できたのは独立による影響だった。
全世界が注目するマウの動向で得る広告収入も、
今後しばらく留まる事は無いだろう。
こうして『月光』は巨大独立企業となった。
だから月光の宇宙競争の相手はその大国の宇宙研究所になる。
■
マウを治療する事に特化した船内で数日間安静にしている間、
毎日月光のメンバーから励まされた。
マウは次第に回復し、最後には好物の焼き肉を食べて全快した。
マウを襲った恐竜は「ドラゴン」と名付けられ、
観察の結果ほぼ夜行性で間違いなさそうだった。
対岸の人影「天球人」は地球人の半分程度の身長で子供なのか成人なのか不明。
元気になったマウは川を泳いで渡り、オルゴールを直接渡す事になった。
医療船の治療で使い終えた部品と天球の植物でいかだを作る。
そして川を渡って水汲みに来る天球人を待った。
■
天球人の文明はまだ石器時代。
「ドラゴン」と激しく生存競争をしている。
対岸のドラゴンは大きく強くなりすぎた個体。
天球人は川を渡って逃げたのである。
ドラゴンは通常大きくてもクマ程度なのだが、あの個体はゾウ程はある。
地球で地球人が文明を築いていた間、天球人は恐竜と戦い続けていた。
文字すらまだ定まっていない原始の人。
マウが声を掛けたのは水汲み担当の「ミキ」。
マウ『こんにちは』
ミキ『!』
ミキは逃げた。
マウは追わない。
■
数十分後、数人の天球人が川辺に現れた。
今度はマウの姿は無く、オルゴールが置かれていた。
天球人はこれ以降、「進化」や「突然変異」ではなく、
「技術開発」や「発明」でもないスピードで発展する。
その変化は二重惑星にのみ存在する新たな言葉で表される。
『共球』
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