観光宇宙遊覧


「切符などの手配はお任せください、ただ宿泊は簡易宿泊施設ですが、男の子の方は大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よ、ここの出身で、今では神父さんになっている方、貴女も知っているキース神父が、男の子の引率を引き受けてくださったわ、もうすぐ来られると思うわ」

「キース神父様が?」


 嬉しそうにしたアニーです。

 キース神父は、アニーにとっては優しいおじさんのような方、時々やってきては、子供たちと遊んだりしてくれた神父さんです。


 キース神父がやってきたので、一行はニューイーグルから、リニアモーターカーに乗りグラブダブドリッブへ。

 ここで衛星連絡鉄道と呼ばれるものに乗りつぎ、フォボスステーションへ。


 子供たちは始めて、ネットワークレイルロードのソル星系外惑星鉄道に乗るわけです。

 列車はあっという間に、目的地に到着します。


 ガリレオ衛星ステーションからは、木星が間近に眺められます。

 展望室からの眺めは好評で、巨大な大赤斑も運がよければはっきりと見える上に、四つの木星のリングも鮮明に眺められます。

 ガリレオ衛星が木星を周回するさまは、ミニチュアの惑星系を眺めるようです。


 観光宇宙遊覧船は、ナーキッドに開示された技術で造られた、マグネティックプラズマセイル推進宇宙船。

 本来は貨物宇宙船なのですが、観光用に改良、ガリレオ衛星ステーションの造船ドッグで建造された、葉巻型宇宙ヨットです。


 でも今回の宇宙ヨットは、長さが三百メートルほどの小型のもので、船名はユウェンタース――ローマ神話の青春の女神、ユーピテルとユーノーの娘である。ウィキベディア参照――号といいます。

 ピカピカの新造船、プレデビューなので、貸切観光となっています、


 かなりの豪華船で、キャビンクルーは女性ばかりでした。

 本来は新設された、ガリレオ航空宇宙女性キャビンスクールの卒業生が配属されるはずですが、当面は公募した短期研修生とのことです。


 そういうことで、代金がかなり安くなっているのです。

  

 イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストを周遊するこの宇宙観光はかなり好評で、気をよくしたアリシアさんは、タイタンステーションからも土星のリングを掠める宇宙観光も計画しているようです。

 運営するソル星系外惑星宇宙観光公社の、利益アップをもくろんでいるようです。


 アリシアさんが乗船ゲート前で待っていました。

「プレデビューで悪いわね、これしか空いてなかったのよ」

 観光宇宙遊覧は、予約が二年先まで詰まっており、アリシアさんが、ソル星系外惑星宇宙観光公社に無理を云って、今回のことが何とか実現したのてす。


 修道院の孤児施設の子供たちが乗るということで、ソル星系外惑星宇宙観光公社も、かなり便宜を図ってくれました。

 特別に船内の飲食料金は無料、子供が好きそうな料理となっているようです。

 ささやかな販促品なども、配ってくれています。


 そしてユウェンタース号は、可愛い子供たちの夢を乗せて、初航海にでたのです。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る