謎の宇宙船


 ガリレオ衛星ステーションを静かに出港したユウェンタース号、ステーションは木星より千八百五十万キロ離れた衛星軌道にあります。

 まずはカリストに向かいます。


 木星の輪がはっきりと見え、巨大な木星のマーブル模様が圧倒的な宇宙空間の中、カリストが見えてきました。


「カリストって、綺麗な精霊の名前なのに綺麗ではないのね……」

 これをアニーが呟いています。


「テラやマルスのように、青い海があるわけではないのですよ」

 キース神父が優しく声を掛けてきました。


 ガリレオ衛星の開発はマルスの四大財閥が行っており、カリストはデヴィッドソン財閥が受け持っています。


「地下に小さい海があると聞いているわ、デヴィッドソンの基地って、氷の上にあるのね」


 アニーさん、一応ガリレオ衛星管執政官府所属なのですけどね……


 ユウェンタース号はこの後、ガニメデ、エウロパ、イオと遊覧を続けています。


 イオは火山が噴火しているのを間近にみれるように、ユウェンタース号はかなり近づいています。


 ラウンジに集まり、イオを間近に見ていた子供たちは大興奮。

「アニーお姉さん、あそこへは降りられないの?」

「許可をもらわなければいけないのよ、イオは危険なの」


 その時、ユウェンタース号が揺れたのです。


 操船ロボットが動かなくなり、緊急非常用回路が作動しました。


 証明が一斉に落ち、代わりに非常灯が点灯、ユウェンタース号は非常事態に陥ったのです。


「何があったの!」

 アニーが船内通信で船長に聞くと、

「進路前方に宇宙船が転移してきました」

「衝突回避のために進路を変えましたが、マグネティックセイルが機能しません」

「いま船内は非常用バッテリーで動いています」


「敵なの?」

「分かりません、攻撃を受けたのかもしれません、操船ロボットが動かなくなっています」


 会話の途中に

「船長、宇宙船が近づいてきます!ぶつかる!」


 ゴツンとした振動がありました。


 そして船内通話も切れ、非常灯までもおち、真っ暗の中、ラウンジの子供たちを、院長先生やキース神父が何とか落ち着かしています。


 アニーにも、子供たちがしがみついてきます。

「大丈夫、大丈夫よ」


 メイドが必ず持っている『小さいカバン』の中より、バッテリー式のランプを取り出しラウンジに置くと、ヘッドランプを装着しました。 

「キース神父様、私、操縦室を見てきます、子供たちをお願いします」


「私がご案内いたします」 

 キャビンクルーの一人、ミエリッキ・オッコネンという、フィンランドの女性が申し出てくれました。


 電源が落ちたので、ユウェンタース号のドアや隔壁は簡単には開きません。

 大体のものは、近くに埋め込まれている手動のハンドルを回せば、何とか動きます。

 とても重いのですけど。


 こうして何とか操舵室へたどり着けました。

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