姫神の女たちⅡ ユーノー・ソスピタ(維持する者)のニンフ 【ノーマル版】
ミスター愛妻
姫神の女たちⅡ ユーノー・ソスピタ(維持する者)のニンフ 【ノーマル版】
第一章 アニーの物語 観光宇宙遊覧の出来事
デイム・アニーのプレゼント
ガリレオ衛星執政官府のアニー・スチュアートは、ある日、観光宇宙遊覧船に乗っていた。
孤児院育ちのアニーは、孤児たちにプレゼントされた木星宇宙観光遊覧に同行したのだ。
観光宇宙遊覧を楽しんでいる一行……そこへ突然、見慣れぬ宇宙船が転移してきた……
* * * * *
ガリレオ衛星ステーションは、先ごろ男性体の残存戦力との交戦で大破しましたが、テラ暦で云うところの秋の初め、十月一日に復旧。
といっても、新しい標準型拡大稼動ステーションに引っ越しが完了し、ガリレオ衛星執政官府は平常業務に戻ったのです。
アニー・スチュアートは、この時十八を超えたばかり。
赤毛の少しばかり気の強そうな可愛い娘で、さすがに寵妃、綺麗なものです。
この事件の前後、マルスのアメリカ地区のベティ女子スクールを三ヶ月ほど休学、ガリレオ衛星の執政官府に臨時の管理官補助として勤務していましたが復学、留年することもありませんでした。
それから一年……
休みになると、お世話になっていた女子修道院の、附属孤児院に時々顔を出しています。
姉のアデラインからもきつく云われている上に、ミコさんからも不義理をせぬように申し付けられているのです。
歳は若いといっても一応は戦争に参加したわけで、管理官補助、つまり一般女官の扱いであったアニーの場合、ガリレオ・バロネス――ガリレオ女男爵――の下、ガリレオ・バロネテス――ガリレオ女準男爵――の資格を持っています。
正式にはデイム・アニー、またはデイム・アニー・スチュアートと、敬称つきで呼ばれるアニー、ささやかながらソル宇宙輸送会社株式の執政官府持分の配当金より、年に二十万円ほどもらえるのです。
そのほかソル宇宙輸送会社の、株主優待と同じ待遇を受けることが出来ます。
このガリレオ衛星ステーションの戦争参加者は、最低でもガリレオ・バロネテス。
管理官などを退官したとしても、この資格は本人に付くので、退職年金の上に加算されるわけです。
ソル宇宙輸送会社の配当金がある限りですがね。
つまりデイム・アニーの場合、寵妃の給料は未成年なのでプールされており、奨学金分の百五十万円と、ガリレオ・バロネテス年金二十万円分が、自由に使える金額なのです。
月に十四万円強、その上にチケットが月一万五千円分ありますので、十八歳のアニーには十分すぎる額です。
幼い頃より修道院の施設で育った関係で、質素倹約が身に染み付いているアニー。
貯金は未支給分の給料がプールされているので、毎年かなりたまりますしね。
それでもマルスの銀行に口座をつくり、結構貯金したりしているアニーです。
でもケチではないのですよ、女子修道院の附属孤児院に顔を出すたびに、子供たちにいろいろとお土産などを提供したりしていますし、寄付なども出来る範囲内で行っているのです。
今日も修道院長へご挨拶に、子供たちにもお土産持参です。
「アニーさん、今日はありがとう、皆喜んでいるわ、よろしくお願いするわ」
今回のお土産は破格です。
子供たちとシスター全員を、ガリレオ衛星ステーションから出ている観光宇宙遊覧に招待したのです。
さすがにアニー一人のお金では足りません。
ある匿名の方のご寄付があればこそ、匿名といってもミコさんなのですけどね。
ナーキッドオーナーが、特定の孤児院だけに寄付とはいきませんので匿名なのです。
これはアニーさんへの論功行賞の意味合いがあります。
手配は姉のアデラインが奔走し、アリシアさんも口利きしたようです。
その為の引率として、アニーがやってきたわけです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます