第234話 「メテオストライク」
雲海から赤茶けた大地【古戦場】へいっきに急降下。
そして直撃の手前でリンドヴルムは『熱杭』を離し、大きく翼を広げた。
地面への爆撃、ついでそれによる爆風。
大きく広げた翼は落下の速度を殺し、そのままさらに爆風を掴んでいっきに真横へ。
「――ッウウウウウ!!!」
体の中身と全身が
真下からついで真上、最後にそのまま真横への強制移動で意識が飛びかける……がなんとかそれを押さえつける。
いっきに流れる視界。高速で古戦場の大地がスライドしていく。
そうして、目指す丘まで一直線に吹っ飛んでいった。
◇◇◇
「来よったの」
「えっ?」
アスタルテのつぶやきにつられ、みけは視界の9割を
そこには厚く巨大な入道雲が広がっている。
師匠が風竜に誘拐された直後に、ぶわっと空に現れたものであり、ときおり耳障りな雷鳴をこちらまで響かせていた。
その入道雲の底から、真っ赤ななにかがボフッと突き出してきた。
そしてみるみる真下へと落下し、そのまま大地を爆撃した。
「……師匠さんの攻撃?」
はるか上空で下方への攻撃という、外せばまさしく
それにしては、きれいに真っ直ぐ、そして荒野の真ん中への空爆だったが……。
「我が弟子ながら完璧なタイミングじゃ。……みけよ、あちらもこちらもほぼ同時。準備はよいな?」
「――!?
えっ、えっと……わかりました!」
もうアレを
しかしそのふたつは重要ではない。
今このとき集中すべき、考えるべきことは別にある。
いまだ優勢一方の勇者を配下の機兵で抑えつつ、みけは意識を切り替える。
そうして直後、彼女のうしろに巨大な岩の塊が現れた。
◇◇◇
急降下からの急停止、そして真横への吹っ飛び。
それら三半規管への暴力からなんとか回復したころ、目指す丘の上にまんまるのかまくらが見えた。
大きさ、そして凝縮された精霊力でわかった。
あれはアスタルテが『地脈移動』によりここまで持ってきたモノだと。
見れば、かまくらのすぐ脇には小さな人影がふたつ。
みけと……アスタルテだろう。
「……。」
ボロ雑巾のように転がっていた状態から、なんとか立ち上がれるまでには回復したのだ。その事実にホッとすると同時に、中身は抜け殻同然だと気づく。
いつもの威圧感や、震え上がるほどの
そして彼女らから離れて丘の真ん中には4つの人影。
ひとつは、四方八方の地面を
みっつは、まるで一個の生命体のように完璧な連携でなんとか攻撃をしのいでいる。
そしてその攻防に、10個の機兵が絶えまなく突撃している。
「……よかった」
いまだ、仲間も、そして最愛の人も無事だ。
そして今からみんなを直接守るのだ。
――後方を見やる。
あれだけ無茶な移動をかましたのに、風竜は平然と追いついていた。
「追いかけっこは終わりかい!? ほらほら、やっぱりアスタルテはまだまだ……」
風に乗せて届くひとり言を無視し、秒でやるべきことを組み上げる。
そうして、わずかに残ってくれたあちらの世界の風精に感謝しつつ、背後に全力の『歪曲』を展開した。
「……でさ、風竜たる僕と空中で、しかも飛行で勝負しようってのがそもそも間ち……ガッ!!?」
そうして、彼は自慢の飛行速度そのままに垂直カーブを決め、生身の『
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後方からの凄まじい衝撃音を確認し、すぐさまリンドヴルムから飛び降りる。
彼の横移動も加わって、まるでカタパルトのようにななめに目的地へかっ飛んでいく。
「――師匠さん!?」
驚くみけのすぐ脇に『歪曲』で着地。
いつもの数段弱いそれを、受け身の技術でなんとか補う。
「師匠さん、風竜は……!?」
「地面に叩きつけて、今は相棒が抑え込んでる!」
「じゃあ、すぐにでも!」と駆け出すみけの肩をつかむ。
「師匠さん?」
「……。」
つかんだ肩はまだまだ成長途中の少女そのもので、力をいれれば折れてしまいそうなくらい。
あちらの世界はおろか、この世界基準でも未成年だ。
そんな少女に、あのバケモノと戦わせるのか。
それはしてもいいことなのか。
そもそも、この少女は絶対に死なせはしまいと誓ったのに……。
「師匠さん、私は大丈夫です。私は絶対に死にませんし、それに……」
みけが後ろを振り返る。
そのさきには岩の殻を破って立つ
まるで卵から産まれたばかりのようだ。
「この子を動かせるのは私しかいません!」
そう言って、みけは俺の手を振りほどきゴーレムへむかって駆け出す。
いつのまにか、頭部のコックピットまでの土の階段すらできていた。
そうして弱々しくも力強いアスタルテの声が背後から。
「みけは本物じゃ。じゃから安心せい……とは言えんが、どちらにせよここでみけが戦わんかったら皆殺しじゃ」
「……アスタルテ」
「まあ、少なくともお主が当たるよりはるかに勝算がある。それにお主にはヤツを封じてもらわねばならん」
「……。」
みけが全力で【
そうなれば前線の攻防はいっきに危うくなるだろう。
すぐにでも、俺がその変わりをせねばならない。
「……わかった」
「そちらも任せたぞぃ」
「ああ」
そうと決まれば全力で勇者の相手をするだけだ。
いまだ納得できない気持ちもあるが、とにかくみけと、アスタルテを信じる。
……そうして、丘の中央へと走りだした。
絶えまなく爆撃音と、紫電が吹き荒れるそのただ中へと。
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※たくさんのお星さま評価頂きありがとうございますm(_ _)m
次の大台である★600が見えてきました。
最近更新ペースが落ちていてかたじけない……しかし、最後までしっかり書ききりたいと思います(終わりまではまだわりとありますがっ!!)
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