第204話 「魔女と二十騎兵」

※短めです。


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いやぁ……昨日はひどい目にあったね。

まさかちょっと焦げるとは思わなかったよ。


俺はこの異世界に来て、腹刺されたり、腹刺されたり、腕飛ばされたりいろいろあったけどさ。

昨日の痛みはそこに食い込むんじゃないかな、ランキング2位か1位で。むしろ断トツ1位で。


すぐ近くに高級エクストラポーションの入った雑嚢ざつのうがあったからよかったけど、無ければ詰んでたね。

いつも火からは守ってくれる火精たちが、まるで仕事しなかったのはなんでだろうね。


「……師匠、もう大丈夫ですか? 昨日は一晩中しくしく泣いてましたが」

「うん、死ぬほど痛かった思い出と、自己嫌悪にさいなまれてで死にたくなってたからね。でももう大丈夫ですよ」


「なんか口調がおかしいですが、ほんとにもう?」

「ええ、大丈夫ですよ。私は賢者です、これまでも、これからもです!」

「……これは重症ですね」


そのあとイリムに頭を撫でてもらったり、やさしく抱擁ほうようしてもらったりでなんとかMPとSAN値を回復できた。


やはり彼女の存在は俺にとって大きい。

あと俺の扱い超うまい。

名指揮官グレートコマンダーである。


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「全回復! よっしゃいくぜ!!」


元気よく個室のドアを開けたら、赤い単眼モノアイと目があった。

全身ゴキブリのように黒光り、サイズはヒトガタ。


「うおっ!」

「――・――オハヨウゴザイマス――・――」


「おはようございます!」とイリム。

「ああ、護衛ご苦労さま」と遅れて俺。


「――・――カンシャカンゲキ――・――」

「……そ、そうか。よかった」


そう。

あの【四大】ダンジョン【底なしの立方体クラインキューブ】のクリア報酬は『白い賢者の石』だけではなかったのだ。


石によってエネルギーを供給されていた50体のゴーレムも報酬に入っていたのだ。

……半分以上は『ヤドリギの短剣ミストルティン』の『魔法解除ディスペル』能力と、カシスの背後からの一撃バックスタブの技術により破壊されていたが。


残った20体はみけの持つ『白い賢者の石』により命を吹き込まれ、そのまま彼女に従う尖兵せんぺいとなった。

存在濃度レベル6相当の、眠らず、疲れを知らない護衛が計20体、宿とその周囲を巡回していたのだ。


「師匠さん、イリムさん。やっとお目覚めですか」


「やあみけ、おはよう」

「みけちゃんおはようございます!」


「……まったく、本当に仲がいいですね」


なにかつぶやきながらみけは首元の白い石をいじる。

ブローチとして加工された『白い賢者の石』だ。


そう、石の所有者はみけになった。

このパーティでもっとも石の特性と合致がっちするのは、彼女をおいて他にはいない。


みけのシルシは破格の魔力を引き寄せ、そして破格の魔力をそのまま扱える。

ゲーム的に解釈するなら、前者はMPゲージ、後者はひとつの術式にどれだけMPを注げるかになる。


ちなみにアルマは後者が低めだった。

ゆえに、自前で扱える魔術はせいぜい初級……そのかわり、引き寄せるときに疲れにくく、一日に扱える魔力はむしろ多かった。

だから魔道具アーティファクト薬瓶ポーションに何度も魔術を重ねがけする錬金術師アルケミストは天職だった。


……天職だったんだ。

自然、ソレ以上の才能を持つみけの頭を撫でていた。


「どうしました、師匠さん?」

「いや、なんでもないよ」


どうかこの娘は、この天才少女には……「だった」なんて言葉を使わせないでくれ。

いや、使わせてなるものか。


「……師匠、ずいぶんみけちゃんには熱心に……」

「えっ、なんか言った?」

「なんでもないですよーだ」


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改めて、みなで大聖堂を訪ねる。

報酬の受け取り、最終確認、その他もろもろ。


報酬は相当のものだったが、しかし今はカネより命だ。

地獄の沙汰もカネ次第というが、カネで命を守るというほうが正しい。

カネだけではしょせんただの金や銀である。


「王都の店で、上級や特級の『防護プロテクション』は入荷してないかね」

「あとふたつなんだけど……というかあればあるだけいいんだけど……難しいかな」


あと『耐色アンチカラー』の青は何個あっても多すぎるということはない。

氷への耐性は何枚、そして何十枚でも欲しい。

俺の炎で打ち消せるとはいえ、保険はいくらでも準備したい。


「あの……ありますけど」

「えっ、レーテ?」

「聖堂の宝物庫に、特級の『防護』指輪がふたつ、上級がみっつ」

「うおおお、まじか! ぜひ買い取らせてほしい!!」

「タダでもいいですよ」

「?」

「その代わり、やって頂きたいことがあります。私たちの今後と、あなた達の今後に関わることです」

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