クラインキューブ
第180話 「【四大】ダンジョン」
「探索に赴いた聖騎士マルスを追い、【奇跡の聖女】レーテが【四大】へ赴いた。いまだ帰らぬ彼女の救出をお願いする」
交易都市からの依頼は、【四大】と呼ばれるダンジョンからの要人救出であった。
……この世界には
大都市にある地下水道はほぼすべてその遺構を利用したものだし、他にもイカれた魔術師が人為的に造った物や、魔力溜まりにより自然発生した物などがある。
この2年間で
2000年前の、闇生みが滅ぼした文明はなんと、いくらかはヤツに対抗していた形跡があるらしい。
つまり、今とは比較にならぬほど魔法や技術が優れていたのだ。
そこから発見される
足りない実力を補ってくれる。
現に、勇者は単体では人間の範囲(……といってもこの世界の人間はおかしいのだが)なのを装備によって【四方】入りしている。
「【四大】って、アレか?」
「踏破不能の4大ダンジョンのことですね!」
イリムが元気に答える。
冒険者にとって憧れのひとつなのだ。
「王都の地下はそのひとつだったよな? 1000年前の王国建国以来、いまだクリアしたやつがいないとか」
「……最深部がほぼ魔界だからなぁ、
「マジか」
恐ろしい話だ。
なぜそんな場所にわざわざ王都を……と、今は他の四大はどうでもいいな。
「交易都市の
「ほうじゃの、【紅の導師】ジェレマイアと幼少期の【異端の魔女】リディア、そして死神【
お……おう。みんななんか二つ名ばっかだね。まあそれはひとまず置いておこう。
「……ジェレマイアの日記にもあったな。つまり、まだ最深部があったのか?」
「ちょうど半年前かな、その最深部とされた部屋の床に、突然入り口が現れたそうよ」
「それ以来、いくつもの冒険者パーティが挑み……ひとりも帰ってきてない。最近は挑む命知らずもほとんどいないって話だけど」
「そんな場所に、なんでマルス達は……」
2年以上前、交易都市で【魔女の領域】と戦い、その後泣き崩れるレーテと、氷漬けのマルス少年に出会った。
そして【魔女の領域】をほんの少し押し返し、氷漬けの少年をザリードゥとともに助けた。
『
「あのときのマルス君、今年で16、17だそうだけど凄い才能があったみたい。聖騎士で、部隊をひとつ任されているんだって」
「……この世界の若者はすげえよな。で、その彼が交易都市の【四大】に挑んじまったと」
「で、お姉さんのレーテのほうは……」
「ああ、知ってる」
大陸でも珍しい、『
どこぞの
西方派、と呼ばれる教会組織のなかでも彼女は高い地位にある。
さきのマルス君もそうだが、年齢よりも功績や能力が重視される世界なのだ。
元の世界の神話や古代の歴史においてもそういった例がある。
例えばかの有名なアレクサンダー大王が東方遠征を開始したのは22歳。
ケルト神話の英雄であるクーフーリンに至っては、国の守りを一手に担い、ひとりで軍隊の行軍を足止めし毎日100人殺していたのが17歳。
恐ろしい話である。
「知り合いであるレーテにまず会う予定だったよな」
「ええ。……交易都市との交渉において、彼女の口添え……協力は必要不可欠よ」
最初、教会からの依頼と聞いて罠であることも疑ったが……コレは取りあえず保留。だが、可能性は低いように思う。
俺が【炎の悪魔】であるとする認識は、ここ2年の調査によればかつて存在した異端刈り、そして帝国の上層に限られる。
もともと民衆は氷の魔女だけでもいっぱいいっぱい、そこに新たな、まさしく俺という火種を注ぎ込むのはリスクしかないのだろう。
恐怖、そしてヒステリーに
ゆえに、西方諸国や王国はおろか、ほとんどの帝国民は【炎の悪魔】なんていまだ過去の話……のはずだ。
まあ、もし罠なら罠で俺の『
そこから先も、いくらでも対処法は思い浮かぶ。
そしてここ2年、俺が修行に明け暮れていた間、イリム、カシス、ザリードゥの三人組は各地の
トライフォースとかいうださい(絶対カシスの命名だ)パーティ名で活躍し、その腕は大陸
その名声を頼って依頼がきた、そうシンプルに受け取ることもできる。
まあ、ここでこれ以上考えていてもしかたがない。
「……この
仲間はみな、つよくうなずいてくれた。
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そうと決まれば早ければ早いほどいい。
ダンジョンに赴いた彼女らが、どれだけ準備していたのかはわからない。
装備も、なにより食材も。
有名グルメマンガとは違いこの世界のモンスターは食べてはいけない。
ワニの養殖の過程において、食べると
「できるだけ急いだほうがいいな。アスタルテ、みんなを『地脈移動』は?」
「我ひとりなら問題ないがの、今は『流れ』が悪いのう。それにまた北方山脈を見てこんといかん」
「そうか」
アスタルテの『地脈移動』は地脈を用いた高速移動術だが、そのほとんどを大地の力に依存しており、いつでもどこにでも……というわけにはいかないそうだ。
彼女いわく季節のようなものがあると。
「表にすでに馬車は用意してあります」と屋敷のメイドさん。
しかし、馬車では10日以上かかる。
もっと速い移動手段はないものか……。
横からみけがハッとした顔で声をあげる。
「師匠さん! リンちゃんはどうでしょう!?」
「いや、リンドヴルムに6人乗り込むのはギリギリで……」
「いえ! 馬車の【荷台】を運んでもらうんです! できますか!?」
「……そうか!」
できる、と即答すると彼女の行動は早かった。
屋敷のメイドさんや、手先の器用なカシスと協力し、馬車の荷台にこまごまと細工を施していく。
箱自体を強化したり先端を尖らせて風の抵抗を減らしたり、内部はクッションなどを貼り付け快適性を確保。
最後に、リンドヴルムが掴みやすいよう、ロープを束ねたものをぐるりと回し込む。
「だいぶ急ごしらえですができました!」
「いや、上出来だ」
さっそく乗り込むか……と考えたところで、都市の大通りでの
街を出て少ししたところからにするべきだ。
「師匠さんたち、これを」
「ああ、助かる」
この館のメイド長であるスミレからいくつか荷物を受取る。
馬車の改造中に手早く準備をしてくれたのだろう。
本当に彼女たちは優秀だ。
「それじゃあ、行ってくる」
「ええ、ご武運を」
スミレが頭を下げると、つられて他のメイドさんたちも。
みなで彼女らに別れを告げ、ザリードゥが馬へムチを振るう。
そうして、俺たちは交易都市へ向け旅立った。
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※昨日は調子がよかったのでストックに余裕ができました。
7月いっぱいでドラゴンノベルスのコンテストが締め切りですので、なるたけ日刊で更新したい所存です(`・ω・´)ゞ ラストスパート、できれば応援お願いいたします。
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