第24話 決定事項

「何でそうなるのか分からないけど……」


俺は頭をひねる。


「俺のアイテムを奪ってどうするんだ? 」


俺は椅子に浅く座りなおすことで弛緩させた空気を再度ひりつかさせた。ここはあくまでも意地を通すか。


「まぁ、待て。」


ギルド長のガンプが両手を上げて話してくる。


「とりあえず事情を説明させろ。それからの判断でも遅くはないはずだ。」


その通りだな。でも、


「こうなる前にその事情を先に聞きたかったけどな。」


パワハラを受けなければいけない理由は特にないはずだしな。


俺は椅子に深く座りなおす。


「まぁ、先ずは事実確認だ。お前たちはダンジョンに行った。そうだな?」


「あぁ。」「はい。」「そうです。」「ピィ。」


「そこで祝福された卵を手に入れたんだな?」


「あぁ。」「はい。」「そうです。」「ピィ。」


ギルド長が話しをしてくるが、えらく迂遠な聞き方をしてくるな。


それが表情に出たのだろう。ギルド長が咳をしてから話しを始める。


「ゴホン。あそこのダンジョンの特異性は知っているな?」


「……レベルが1から始まることか?」


「そうだ。」


「特異性って言うかもしれないが……そこまでか?」


「……シンゴ殿は、そのダンジョンを攻略するのにどれくらいの時間がかかると思われる?」


ダンジョンの攻略にかかる時間?したことないからなぁ……腕を組み考えるが、


「どれくらい……分からん。3ヶ月くらいか?」


「……ギルドはナミの話を基に計算して、10年はかかると見ている。」


「10年!? そんなにかかるのか!」


10年もダンジョン生活したくないぞ!


「レベル上げに時間がかかること、装備を固めても死にやすいこと、しかも長期の遠征に慣れているパーティーじゃないとクリアが難しいだろう」


「ふむふむ。」


安全策を取ると10年はかかるって……ダンジョン攻略ってのは大変だな。


「そこで、シンゴ殿に専属で任せたい。」


「……俺に?」


あれ?俺ら3人じゃないの? 隣にいるナミやファミルを見ると表情が変わってない所を見ると、こいつら知ってたな。


俺がキョロキョロと隣を見ていたからか、ギルド長のガンプと、教会のクーリアが話しだした。


「ナミはA級の冒険者だ。元々のパーティーに戻り、高難度のダンジョンを攻略してもらう。」


「ファミル様は祝福された卵の孵化をお願いしています。また、無事に孵化されたシロガネ様と新たに加わった聖獣様達と共に別のダンジョンへと赴いていただき、修行に励んでいただく予定です。」


「……つまり、俺1人で今のダンジョンを攻略しろと?」


「シンゴ殿は死んでも生き返るんだろ?なら、シンゴ殿にしか出来ねえことだ。」


「嫌と言ったら?」


「ギルドから排除だ。」

「教会からも貴方を異端者として認定します。」


……これってさ、いじめじゃない? 嫌がらせじゃない? 真面目に冒険者しているのに権力使ってこんなことしていいの?


1人で何回も死んでやり直せって……俺、毒くらって死んだ時キツかったアレをまたやるの?


椅子に腰掛けながら頭を抱える。


「その代わり!」


「……その代わり?」


何だ?俺は顔を上げてギルド長を見る。


「シンゴ殿をC級にランクアップする。また、この街で準備出来る武器と防具を与える。後はこのダンジョンのドロップに限り、買取価格を2倍で買取ろう。」


「教会としては不本意ですが、シンゴ殿が何度も死に戻りをされて、聖女様のダンジョン攻略が進まないと風評被害が出る恐れがありますので、教会も手助けさせてもらいます。」


……なら、教会で何とかしてくれませんかね?軽く睨むが司祭のクーリアはどこ吹く風だ。


「教会としては、シンゴ殿を教会で庇護させてもらうことと、祝福された卵を1つお渡しします。」


「……それだけ?」


俺が言った言葉にクーリアが睨んでくる。


「教会として精一杯のご支援だと思いますが?」


「祝福された卵なんて、5階層以降だと手に入りますけど?」


「あぁ。そうでした。手に入った祝福された卵は必ず教会にお持ち下さい。」


「なんで?」


「それが教会が貴方に協力する条件だからです。」


「……俺にはあまり旨味がないんですね。」


「実感がないだけです。教会の庇護に入る。これがどのようなことなのか。後々分かりますよ。」


司祭のクーリアはそう言ったあと、俺の手元に祝福された卵を置いた。目が合うと笑顔を見せた。でも目が笑ってないからこわいな。


「伝えることは伝えたぞ。後は仲間で話してくれ。以上だ。」


「神の御加護がありますように。」


「おい、ちょっ、……マジかよ。」


ギルド長と教会の連中は振り向かずに去っていった。


残ったのはいつものメンバーだった。


「ピィピィ。」


シロガネが励ましてくれようとしている。


それ以外は無言だった。

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