第16話 教会とギルド(1)
昨日と同じようにダンジョンへと向かうと、
ダンジョンの前で大人たちが揉めている。
「え…何だこれ?何が起こった?」
「あちゃ~…」
「やっぱり、こうなりますよね…」
「ピィ~…」
シロガネも首を振っては仕方ないなぁと嘆いているように見える。
…お前まだ、生まれて間もないはずだよな?
「てか、皆はこうなるって分かってたの?」
「まぁ、ね。予想はしてたけど、ここまでヒドイとは思わなかったわ。」
「私は…予想通りですかね。」
「ピィ。」
…シロガネにツッコミ入れるの疲れてきたな。
「とりあえず…どうする?」
「私達では解決出来ないし、したくもないから、私達はダンジョンに入ってしまいましょ。」
「そうですね。時間の無駄だと思います。」
「ピィ。ピィ。」
…揉めているのを無視するって言ってもあの間を通らないとダンジョン入れないんだよな…
「まぁ、気にしなくていいなら、とっとと通り抜けるか。」
大勢の大人達の間を通りすぎる。
「あ、聖女様だ!」
「おい、あれはナミじゃないか?」
2人とも有名人だから、絡まれてしまうのも仕方ないな。
「走るよ。」「走りますよ。」
「え?」
俺は右側をナミに、左側をファミルに引っ張られ、ダンジョンへと連れていかれた。
「おい、ちょっ…」
「ピィ。ピィ。」
シロガネは新しい遊びと思っているのか、楽しそうだ。
「あぁ!聖女様~」
「ナミ!待ってくれ~」
大人たちがダンジョンの前で俺達に手を伸ばしてくるが、その間をすり抜けてダンジョンへと入っていく。
「…中までは入って来ないようね。」
「…そのようですね。」
大人達は…追ってはこないようだ。
ドサッ。
「いでぁい。」
捕まれてた腕を急に離されて、お尻を打ち付けた。
「あ、ごめん。」
「シンゴさん、すいません。」
「ピィ。」
「いや。いいけどさ…あの人達はなんなの?」
「冒険者ギルドの幹部よ。」
「教会の司祭様です。」
「…お偉いさんってこと?仲が悪そうだったけど、何してたの?」
「利権争いよ。」
「利権?…ダンジョンの?」
「そうよ。」
「えっ…でもダンジョンって冒険者に解放しているから冒険者ギルドが管理するんじゃないの?」
「基本はそうだけどね…」
「私が関わったからです。」
「ファミルが?」
「えぇ。私が神託を受けて下水道のどぶ掃除をしていたこと。祝福された卵が孵化したことが要因です。」
はぁ~。
ファミルがため息をついている。
「教会に報告したら、教会が下水道を管理している時の出来事なので、そのまま教会が管理をするって息巻いているんです。」
「…でも、ダンジョンは冒険者ギルドの管轄だよね?」
「シンゴ。教会は何で成り立ってるか分かる?」
「急になんだよ…そりゃ信者のお布施とかだろ?」
「そうね。その信者を増やすにはどうするの?」
「どうって…勧誘?」
「勧誘の道具に使うのよ。」
「使うって…ダンジョンを?」
「神託と杖。祝福された卵から孵化したシロガネ。ストーリーとしては申し分ないわ。」
「はぁ…」
「よかったじゃないシンゴ。祝福の聖女様と同じパーティーだから、有名になれるわよ。」
「え?祝福の聖女様?」
「教会で、勝手に話が盛られて作られるんですよ。現実的よりも少し盛った方がウケがいいらしいです。」
疲れた顔でファミルが話す。
「ピィ~、ピィ~。」
「ありがとう、シロガネちゃん。」
シロガネのナイスフォローにより、ファミルにも笑顔が戻る。
「それで、揉めていたのか…」
「冒険者ギルドも金になるダンジョンを簡単には渡せないしね。」
「金になるかは、まだ分からないんじゃないか?」
「なるわ。」
「何で?」
「アリの触角よ。」
「触角って…どこでも手に入るじゃないか。何でそれが金になるんだ?」
「金貨一枚。」
「ん?何が?」
「昨日、持って帰ったアリの触角の値段よ。」
「金貨一枚って…高くね?」
金貨一枚あれば、高級ディナーが食えるぞ。
「まぁ、オークション制にしたから、値段がつり上げられたせいもあるけどね。普段は銀貨二枚かしら。」
「それでも高いな。何でだ?あんなの簡単に手に入るじゃないか。」
「それだけ需要があるのよ。」
「う~ん…触角ってダウジングに使ってたよな?」
「そうね。こっちでも触角はダウジング用ね。」
「需要があるってことは、皆がアイテムを探してるんだよな?何のアイテムを探してんだ?」
「ポーションよ。」
「ポーション?回復の?完全回復のエリクサーでも探しているのか?」
「いいえ。ただのポーションよ。」
「ただのポーションって…なんでそんなのをわざわざダウジングまでして探すんだ?」
「回復の方法が限定されているからよ。」
「限定って…何で?」
「…それは教会が関与しているからです。」
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