第14話 仲間にしますか? 『はい・いいえ』

「ピィ、ピィピィ。」


「…可愛いじゃん。」


「間違いない。しかも、微妙にレアだしな。」


ついに産まれた。


殻にヒビが入り、中から元気なオスのヒヨコが産まれた。


「可愛い…」


手のひらで卵が孵り、産まれたヒヨコを眺めているファミルが呟くように、ヒヨコにささやく。


「ピィ、ピィィ、ピィ。」


「あぁ!何て可愛いんでしょう!ナミさんもシンゴさんもそう思いますよね?」


「「あぁ。も、もちろん可愛い!」」


「ですよね~。」


聖女様と言うより、年相応の女の娘に戻ったファミル。ヒヨコと笑顔で見つめあっている。


「…シンゴ。」


「何だ?」


「あんたが言いなさいよ。」


「…何を?」


「…分かってて聞いているクセに。」


「…」


そうなのだ。卵の光り方で分かっていたんだ。


弱いモンスターが孵化することを。


そう。残念ながらヒヨコは弱いんだ。


鍛えたら多少は強くなるが、現状だと戦いに出せる状態ではない。レアなのは白い羽毛だ。


縛りプレイが好きな人か、クリア後のお楽しみに使うモンスターだ。


「ナミは…あの状態のファミルに言えるか?」


「ムリよ。だからシンゴに任せるわ。」


「ずっこ!お前ずっこ!」


「女の特権よ。」


「そんなん初めて聞いたわ…」


「…バカなやり取りはここまでにしましょ…それで…どうする?」


「そうだな…」


ゲームの世界だと、祝福された卵はいくつも見つかる。良いレア度のモンスターが出るまで引きまくるのが、ゲームの中では当たり前だった。


つまり、弱いモンスターは孵化させてすぐに捨てる。


「…そう言ったゲームの世界の常識がファミルに通じるだろうか…」


「ムリじゃない?」


「だろうな…ファミル!」


「ふふふ…可愛い…」


「お、おい!ファミル!」


「…!…コホン、何ですかシンゴさん?」


呼びかけにハッ!と気づくと何気ない顔でファミルはこちらを見てくる。


…手元のヒヨコを、チラチラと見ながら。


「…ダンジョンどうする?」


「そうでした。ダンジョンでしたね…シンゴさん、ナミさん、行きましょう。」


「ピィ!」


ファミルが立ち上がり、ダンジョンへと向かう。


ヒヨコもやる気のある声を出す。


…いや、ちょ~っと待った。


「ファミル!ちょ~っと待って。その…ヒヨコ?も連れていくの?」


「はい?シロガネのことですか?」


「シロガネ…もう名前つけたんだ…。」


「そうですよ!この銀色に光る毛並み。し・か・も!ですよ、フワフワのモコモコなんです!これは神様からのプレゼントで間違いありません!私、以前から動物を飼いたいなって思ってまして…あ、日本で暮らしていた時も、こっちでも動物を飼う機会に恵まれなくて…どうせ飼うなら毛並みの良い動物がいいなぁってずっと思ってたんですよ。こっちでは神様にお祈りすることが多かったので、修行の合間で神様にお願いしていたんです。あ、もちろん修行はきちんとしていましたよ。それでですね、「ストップ!!」…」


…おいおい、どんだけ喋るんだよ…


軽く引くわ…


「分かったから、落ち着こう。」


「はい、すいませんでした。」


「ファミルって意外と熱い人なのね。」


「…恥ずかしいです。」


「えっと…とりあえずシロガネなんだけど…今回は連れていかない方がいいかな~って。」


「…え?どうしてそんなこと言うんですか?」


「ピィィ?」


くっ!上目遣いとはあざとい。シロガネも首を傾げて上目遣いしてくるとは…可愛いじゃないか。


「いや、実は…祝福された卵にはレア度があってさ…かくかくしかじか…なんだよ。」


「…レア度が高いモンスターが出るまで回す…そして、レア度が高いモンスターを仲間にすると楽にすすめるということですね?」 


「あぁ、そうだ。ゲームの世界ではそうしていた。」


「でも、大丈夫ですよ。シロガネちゃんは強くなります!」


「ピィピィィ!」


ヒヨコは胸を張ってアピールしている。


…ファミル…そんなん言われてもなぁ。


…ヒヨコ、お前生まれたてやのに感情豊かやな…


「ねぇ、ファミル。どうしてシロガネが強くなるって分かるの?」


「何となく…ではないですよ。」


出た…真の黒幕現象…ん?


あれ?ゲームのセリフと違うな。


「何となくじゃないの?」


「はい。だって神様が約束して下さったのですから。」


えぇ~!神様が!?


「ファミル、それはどういうこと?私達にも分かるように教えて。」


ナミが戸惑いながらファミルに尋ねる。


「私、動物を飼いたいって祈ってたとお伝えしましたよね?私が毎日毎日、かかさずに10年ほどお祈りしていたら、それを神様が見てくださって、与えて下さったんです。」


10年間も毎日祈ってたファミルすごくない?そんなに祈ってたら神様も動いてくれるんだな。


「神様が…それで?」


「はい。ずっと一緒にいられるように、初期能力を向上させ、上限を上げたと言われていました。」


「どういうこと?少し強いヒヨコってこと?」


「…いや、これは…きっとあれよ。」


「何だよアレって」


「普通のヒヨコでは経験できないやつよ。」


「それって何?」


「覚醒よ。覚醒進化。」


「え?覚醒?…!じゃあ、もぅヒヨコのシロガネは覚醒後ってこと?」


「そうだと思うわ。」


…俺らの誰よりも強いんじゃ…ナミでギリギリ互角になるか?


「シロガネが産まれるにはシンゴさんが持っている杖じゃないと孵化しないと神様に言われていたので、シンゴさんが見つけて、貸してくれるってなった時は本当に嬉しかったです。」


だから、杖を欲しがっていたのか…


「なら、シロガネがいても大丈夫ね!さっそく行きましょう。シロガネ期待してるわよ。」


「ピィ~。ピィッピィ~」


ナミのセリフに親指?を立てて返すシロガネ。


生まれたてだけど…やっぱり言葉分かってるよね?

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