第13話 3人+1?

「そろそろシャキッとしなさいよ。」


ナミに叱咤されるが、先ほど死んだ俺としては気持ちがのらない。


「今度はファミルもいるんだし、毒になっても回復してもらえるから大丈夫だって。」


たしかにその通りだが…あの苦しみをまた味わうのか…


「シンゴ、ぶっさいくな顔してるよ。」


「うっせぇ。毒をくらったらこんな顔にもなるわ。」


「私も何回か毒になったけど、慣れたら大丈夫よ。」


「慣れたくないわ!あんな辛いのを慣れられるか!それに、ナミの装備には毒を無効化するだろうが!」


「ばれたか。」


「ばれないでか。」


「でも、レベル上げれば、そこまで辛くないらしいから。それまでの辛抱ね。」


「レベルかぁ…先が長いなぁ。」


「あの…」


「ん?どうしたのファミル?」


「ダンジョンに入る前にこの卵を孵してあげてもいいですか?」


そういってファミルは胸元から卵を出してくる。


「…(何故そんなところに入れてるんだ?)。そうだな。卵を孵してモンスターを連れていけば、ダンジョンも多少は楽になるな。」


「…。そうね!孵化するところ見てみたいわ!シンゴ、杖をファミルに渡して孵化させてみましょう!」


「あいよ。」


杖をファミルに手渡す。


「これは…私へのプレゼントですか?」


「やらねぇよ。違うってわかって言ってるだろ?」


「ふふ…。」


肯定も否定もしないところが怖いが、無視する。


「さぁ、チャッチャット孵化させて、弱ければまた卵を集めて孵化させましょ。」


「…?また卵を探すのですか?なかなか集まらないのでは?」


「それは、今までの下水道ならね。」


「?」


「ダンジョンが解放された下水道なら、以前より拾いやすいわ。そして…」


「そして?」


「ダンジョンでは卵って、わりかし簡単に手に入るのよ。」


「そうなんですか?」


「そ~!なんです。」



「コホン。さて、それではファミル、サクッと孵化させてよ。」


「そうですね。とりあえず、やってみましょう。『不動』」


杖のスキルを使い、ファミルは卵に魔力を注ぐ。


「何が出るかな、何が出るかな…ふふふ、ふん、ふん、ふふふ、ふん。」


「ナミ…古くね?」


「そう?そんなことないと思うけど…」


「…まぁ、いいか。」


そんなくだらないことを話していると、ファミルが抱いている卵が光りを放つ。


「…キレイな光りだな。」


「…言い方。」


いや、実際にキレイな光りだと思ってるよ!


…ただなぁ…


「あ、孵りそうです!」


卵にヒビが入り、割れようとしている。キラキラとした表情で卵を食い入るように見ているファミル。そんな顔してる人に言えるか?


…それ、レア度低い『所謂ハズレ』モンスターって…



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