第10話 ダンジョン

「さすが、聖女様よねぇ…」


「そうだな…」


あれからしばらく待ったが、聖女様を讃える歓声は冷めるどころか、さらに盛り上がっているように感じる。


「シンゴ、どうする?」


「どうするって言われても…杖がないと何も出来ないしな…」


「ダンジョンを覗いてみる?私、これでもA級だし。レベル1になってもこの装備があれば問題ないよ。」


「…たしかにそうだな…。ダンジョンって、戻って来ることは出来るの?死なないと戻れないとか嫌だけど。」


「5階層ごとに中ボスがいて、そいつを倒すと帰還用の魔方陣がでるわ。それか、ダンジョンの中で帰還用のアイテムを手に入れるかね。」


「それはゲームと一緒なんだな。」


…すると、お付きの方がこちらへとやってくる。

杖を持っているぞ。


「聖女様より、まだまだ時間がかかるとのことで、杖を先にお返しします。とのことです。」


「ありがとうございます、またいつでも杖をお貸ししますと聖女様にお伝えください。」


「…神は貴方の行いをみております。」


お付きの方はこちらを睨みながら、聖女様の元へと帰っていく。


「ねえ、シンゴ。あの人なんであんなに貴方を睨んでるの?何か悪いことしたの?」


「何もしてねえよ。あの人はこの杖は聖女様が持つにふさわしいって思ってるんじゃね?」


「ふう~ん。」


「何回か教会に寄進するように言われたけど、断ったから睨まれてるんだろうね。」


「…大丈夫なの?」


「聖女様との約束がある内は大丈夫だろ。約束が終わった後は分からん。それまでには逃げ出したいね。」


「ふ~ん」


「さて、杖も戻ったことだし、ダンジョン行きますか?」


「そうね。ここのダンジョンはどんな感じか体験してみましょ。」


「アンデッドは出るのか?」


「そのうち出ると思うけど、低い階層では出ないと思うわ。」


「了解。それなら行きますか。」


負傷者のテントから下水道へと入っていく。


杖のあった空間を越えると、ダンジョンだろう。


奥へと伸びる洞窟が出来ている。


ナミは臆することなく、ひょいと中へと入っていく。


慌てて付いていくと、洞窟とは思えない天井の高い空間に出た。さっきまでの下水道とは、作りも違う空間だ。


洞窟のヒンヤリとしたまとわりつくような空気が

ダンジョンに来たんだと俺の身を引き締めた。


「ここからは、気を付けてね。レベル1になるから、雑魚だと思う敵でも、嘗めてると痛い目みるから。」


「了解。レベル上げはしていくのか?」


「武器は強いから、ここでレベル上げせずに、もう少し進んだところでするわ。」


「オッケーそれまで付いていくよ。」


「あら、シンゴが先導してくれないの?」


「自分の防具を見て言えよ。俺はただの布の服。ナミはヒロイン専用防具。どう考えても先頭はナミだろ。」


「まぁ、そうよね。分かったわ、付いてきて。」


さて、初めてのダンジョン…楽しみますか!










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