第3話 恩恵

「ここは宿屋じゃねぇんだ。本当に帰ってくるんじゃねぇよ。二度と帰ってくるな。」


「すいません。お世話になりました。」


くそっ!何で二度も泊まらないといけないんだ。

昨日は優しかったあの人も呆れて怒ってるじゃねぇか。


…仕方ない。済んだことだ。今やれることをやるしかないな。


二日も頭を冷やすことが出来たので、何をすべきかが、まとまってきた。


情報、レベル上げ、金策。

この3つだ。


それが全て満たされるであろう…冒険者ギルドに行くしかない。


…独房からは遠いな。


…お昼前にやっとこさ、ギルドへ着いたぞ。


中に入るか…思ったより人が少ないな。お昼だからか?


…えーっと、こんな時ゲームなら受付でクエストを選んでいたな…受付嬢に聞くか。


「どうされました?」


「すいません。クエストを受けたいんですが…」

そう言って、冒険者登録証の紙を見せる。


「新人の方ですね。今ですと…どぶ掃除クエストは…締め切られていますね。でしたら、薬草採取か常時討伐依頼がかかっているクエストしかオススメ出来るのはないですね。」


「えっ?どぶ掃除って…それって…聖女様の?」


おっ、ラッキー。話を聞けそうだぞ。


「そうです。ご存知でしたか。聖女様がどぶ掃除を自らされています。聖女様のおかげで、多くの方が助かっているんですよ。」


「へぇ~!さすが聖女様ですね。」


「えぇ!そんな聖女様を近くで拝見することが出来ると、皆さんこぞってクエストを希望されます。

その為、今では抽選になるほどの人気ですよ!

しかも、聖女様は必ずクエストを受けた全ての冒険者に挨拶して下さるんですよ。

でもね、それだけじゃないんです。」


「え?と言うと?」


「聖女様から加護が頂けるんです!」


「加護ですか!本当ですか!?」


何ですとー!!


加護って言うとゲームでは有意義なパッシブが手にはいるスキルたけど、そんな簡単にはもらえなかったはず…


聖女様の加護なんて、大金を払わないともらえなかったはずだぞ。


「えぇ。でも期間限定なんですけどね。」


「期間限定?」


「はい。本来、加護を貰うには協会の限られた聖域で儀式を執り行う必要があります。

その為か、聖女様のお言葉だけでは、数日しか加護の恩恵を得られないんです。

だから皆さんは加護が無くなると、またどぶ掃除に参加されるので、人気になっているという訳です。」


「なるほど…」


期間限定でも加護がつくなら、そりゃ皆がどぶ掃除を希望するだろ。


「そんな人気のクエストですが、新人の方には優先して、どぶ掃除を受ける権利があります。いかがしますか?」


「え!受けられるんですか!?」


「え、えぇ。

元々どぶ掃除は人気がないクエストで、新人の冒険者を支援するためのクエストなので、新人の方が優先して受けられるようになっているんです。

でも、あまりの人気で、今では優先出来る回数が1回限りとなっていますけどね。」


俺の食い付きぶりに少し引いた受付嬢だったが、すぐに持ち直して説明してくれた。


「分かりました。ぜひ、どぶ掃除を受けたいです!」


「分かりました。本日分は締め切られていますので、明日のどぶ掃除クエストに登録しておきますね。今日は予定が空きましたがどうされますか?他のクエストを受けますか?」


「いや、明日の準備をしたいと思いますので、今日は帰ります。」


「分かりました。明日は日の出と共にクエストが受けれますので、早めにギルドへ来て下さいね。」


「分かりました。あの、ちなみになんですが、聖女様は何でどぶ掃除をされているのでしょうか?」


「何でって…きっと聖女様には、深い理由があるのだと思いますよ。」


「そうですよね。ありがとうございました。」

お礼を言ってギルドを出る。


聖女様が何でどぶ掃除をしているのか分からないが、これで俺もどぶ掃除が出来る!


よしよし。1歩前進したぞ。

しかも、どぶ掃除が出来るなんて。


しばらくは地道にレベル上げするしかないと思っていたが、これなら楽な方法が取れるかもしれない。


実は、ゲームの世界では、どぶ掃除クエストを受けると、クエスト中に、下水道の一部が封印されているのを発見出来る。


結局、最後まで進めても封印を解除することが出来ないんだが、クリア後の2週目の時に、どぶ掃除のクエストを行うと、封印を解除することが出来る。


封印を解除すると、今まで行った街へすぐに行けるようになるんだ。


封印に使われている杖も武器として優秀で、しばらくはこの杖があれば問題ない性能だ。


よし!待っていろよサクラ!

俺は杖を手に入れて、レベルを上げまくって、少しでも早く、サクラを仲間にするからな!


うぉ~ラ!!

ワックワクするぞ!!

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