第2話 初めての・・・

「お世話になりました。」


「気をつけてな。もう、帰ってくるなよ。」


定番?の会話を済まして俺は翌朝、独房から出してもらえた。


「腹が減ったなぁ。朝ごはんを食べに行くか。」


俺は食事が食べれる場所を探して街の探索へと繰り出した。


モグ…モグ…モグモグ…

屋台での食事は美味しかった。何か分からない肉と野菜をパンで

挟んだものだったが、日本で売っているものと大差ない味だった。


お金?チュートリアルでサクラが説明してくれていて、数日は生活出来る

金額は持っている。財布に入れているだけで、イメージすると手からお金が出てくるんだ。スリの心配が無い安心設定で、さすがご都合主義と思う。


あぁ…サクラ…。

思い出してしまった。あの時の感覚を思い出し、ニヤけてしまうが、これから会えないと思うと寂しい。


お腹も満たされたので、真剣にサクラを仲間にする方法を検討しよう。


ゲームではラスボスの前にしか仲間に出来ない。昨日、仲間に誘ったけどムリだったのは、やっぱりゲームと同じように最後までいかないといけないのか?


ラスボスのいる場所は分かるが、今のままじゃ行けない。空飛ぶ船が必要だ。それかドラゴンか…どっちもムリだな。


うーん、ゲームの通りに進める必要があるのかどうかも検討が必要だな。俺以外にも異世界に来た人がいるかもしれないからな。街で情報を集めながら進めていくしかないのか…


「あぁ…サクラ…待ってろよ。絶対に!ぜっっったいに、仲間にしてやるからな。いつになるか分からないけど、出来るだけ早く迎えに行くからな。」


ポンポン


「はい?」


「お前、いいかげんにしてくれない?道で大声で叫ぶなって昨日も言ったよね?他の人に迷惑だって俺、昨日もお前に言ったよね?聞こえてなかったの?」


「すいませんでした~~。」


街の衛兵さんに誠心誠意を込めて謝る。


次は捕まえるからと言って、衛兵さんは離れていく。


「ふぅ~、やばいやばい。二日続けての独房になるところだった。」


とりあえず、情報を集めるか…酒場もいいが、冒険者ギルドだな。

レベルを上げれば選択肢も増えるだろうし…


俺は冒険者ギルドに向かって走る。

別に、周りの目が不審者を見るような冷たい目をしているからじゃないぞ。体を鍛えるために走っているんだ。勘違いしないように。


冒険者ギルドに入ると多くの冒険者が入り口近くに集まっている。

何だ?昨日は見なかった光景だ。何かのイベントか?この街でこんなイベントは

なかったはずだが。あ、ギルドの職員制服を着た人が来たぞ。


「はーい、皆さん。抽選の結果発表しまーす。」


「おぉ!………やったぁ!受かったぞ!……クソッ!落ちた!なんでだぁ!」


何だ何だ?この熱気は何だ?何の抽選をしていたんだ?受かった人は笑顔でどこかに行くし、落ちた人はギルドの中に入っていくし…人がいなくなったぞ。あ、ギルドの人がいるな。


「あの、」


「はい?受かったのなら早く現場に向かってくださいね。」


「いえ、何の抽選をしていたのかと思って。教えてもらえませんか?」


「あぁ。最近この街に来られたのですね。さっきの抽選はこの街のどぶ掃除クエストの抽選ですよ。」


「どぶ掃除?どぶ掃除ってあの地下下水道の?」


「そうですよ。」


おかしい…どぶ掃除は冒険者ギルドの初心者向けのクエストで、いわゆる3Kと呼ばれる不人気なクエストのはずだ。何であんなに人気なんだ?首をかしげてしまう。


「初めて聞いた人は同じような顔をされます。でも、今は聖女様がどぶ掃除を自らされていて、協力してくれる冒険者に優しく話しかけてくれますので、皆さん競ってどぶ掃除クエストを希望されるので、抽選にすることにしたんです。」


そういって、ギルドの職員はギルドの中に戻っていく。


聖女様だと!?ゲームだと仲間になる人じゃないか!?でも、どぶ掃除?

ゲームの世界だと協会に行ってイベントを起こす必要があったけど…


ゲームの世界と違うのか?調べる必要があるな…


笑顔でギルドを去っていく人を追いかけることにしよう。道は分かっているが違うところがあるかもしれない。俺は周りを見渡しながら自分が知っているゲームの世界との違いを探して歩いていく。


うん、分かった。

ゲームとの違いを探したが、ゲームをしていた時は最初の街を隅々まで歩いていた訳じゃないことを思い出し、何が違うのか分からないことが分かったぐらいだ。


お、騎士団がいるな。

地下下水道に近づいてくると、騎士団が立っている。笑顔の人たちはそのまま下水道へと進んでいく。あれ?素通りしているけどいいの?


俺もそのまま行けるのか?付いていこうと下水道に向かって歩いて行くと、壁にぶつかるように進めなくなった。なんだこれ?


「お前!ここに何のようだ!!」


騎士団の一人が剣を抜いてこちらに向けてくる。顔が恐い。


「いや、下水道に用事が…」


「今は騎士団が下水道を管理している。冒険者ギルドでクエストを受注した者以外は入れない。再度聞くぞ。下水道に何の用事だ。」


え!?下水道クエストを受注した者しか入れないとかそんなことあるの!?

空気がピリッとした気がする。ここは素直に話すしかない。


「すいません。実は、この街に初めて来たばかりで…冒険者ギルドで抽選していたクエストがどんなクエストなのか見に来たんです。」


俺が紙で出来た冒険者ギルドの登録証を見せると、少し空気が緩んだ気がするも、剣を下げることなく、こちらの全身を注意深く見ている。


「初心者なら見逃すが、ここには聖女様がいらっしゃる。早々に立ち去れ。中に入るにはクエストを受注しろ。じゃないと中に入ることはできない。」


「教えてください。どうして聖女様がどぶ掃除をされているんですか?」


「国民のために汗をかかれている。それ以外に理由がいるのか?」


騎士団の顔が厳しくなった気がする。


「はい、すいません。帰ります。」


おとなしく帰るか。まだまだ無理を通すには強さも情報もない。

しかし聖女様かぁ…ゲームの世界でも国民に優しい人だったが、何でどぶ掃除をしているかだが…分からん。冒険者ギルドで分かるかなぁ。


「あ、あいつ、昨日街で叫んでたヤツじゃないか?」


誰だ!?そんなことを言うヤツは!?

ほら、騎士団の顔つきが恐くなったじゃないか!!


「あぁ、大通りで出てこないとか、意味不明な事を叫んでたヤツじゃないか。」


こら!?そんなこと言うな…あぁ…騎士団の人たちが広がって近づいてきたじゃないか。逃げようかな…


「そこのヤツ。逃げると弓矢で射るぞ。敵意がないのなら地面に寝転べ。」


アカン。殺される。俺はすぐに地面に寝転ぶ。騎士団が駆け出してきて、俺の上に乗ったと思ったら、すぐに拘束され無力化してくる。


「うげぇ」

騎士の重さで肺から空気が…息が出来ねぇ…



「このまま取り調べをするぞ。独房へ連れていけ。」


独房に連泊するなんて…初めての経験だ…と思いながら、意識が遠のいていった。

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