第34話

 瞬間、棍棒は地面を粉砕し、ごっそりと削り取り、地面を巻き上げながら振り抜かれることとなる。

 恵まれた身体能力から生み出される強大な力を活かした、オーガの放った一撃は、局地的な地震と共に大地に深い傷跡を残した。


 そこには、生物が存在した僅かな痕跡すら見当たらない。


「分かりやすい大振りでしたね」


 オーガはその冷静な声に反応し、声の元に視線を向ける。

 振り上げた棍棒の上に、動けないところを叩き殺したはずの獲物が乗っていた。


 そして敵は自身を冷酷に見つめていただけではなく、赤く光る矢を番えており、小さな口で何事かを呟いた。


「次は鼻です」


 オーガがその言葉を理解する前に、赤い閃光がオーガの眼を眩ませた。


 鼻に命中した閃光は一瞬にして球状に膨れ上がり、熱と光を一瞬の内に増幅させ、小爆発を引き起こした。

 顔の中心に受けた不意の衝撃と痛みに耐え切れず、オーガはたたらを踏む。

 よろめいた足が落ち葉の重層に体重を預けることにより、湿って摩擦の少ないそれらを互いに滑らせ、巨体の足を転ばせた。

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