第33話
オーガはエリザベスから離れた位置に立ったまま、間合いを詰めようとすることもなく、その場で右腕を大きく振りかぶり、握りしめた棍棒を大地へと叩きつけた。
轟音と共に地面が揺れ、落ち葉が舞い上がり、土砂が宙に吹き上がる。
それらの粉塵が、オーガの姿を一瞬の間、エリザベスから隠すこととなった。
巻き上げられた粉塵は、エリザベスの元にまで届いている。
森における視界は暗く、さらには粉塵によって知覚を完全に封じられた形である。
オーガを見失った僅かな間に、彼女は不意に側に迫る巨大な圧を感じ取った。
そして同時に、エリザベスはオーガの思考を理解した。
敵は怒り狂っているように見えるが、極めて冷静にこちらを殺しにきている、と。
オーガは棍棒を振り下ろし、吹き上げた粉塵を隠れ蓑としたのだ。
自身の姿を敵から隠すという技術は、単純な戦術であるものの、並の魔物には到底できない芸当である。
さらには、筋力による体重をものともせず、大きな歩幅と軽やかな足捌きでもって俊敏に動き、互いの距離を一瞬で詰めきったのだった。
オーガは視覚に頼らずとも敵の気配を正確に感じ取っており、その気配に向かって右腕を思い切り振り抜いていく。
巨大な棍棒が敵を砕き殺さんと咆哮しているかのように、唸りを上げて迫りゆく。
――命中した。
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