第28話

「ドラゴン級の強力な魔物なら、予備の魔力源として体内に幾つか保持している可能性はありますけれど。そこらの魔物には普通ありませんね」


 森や平原などに生息している魔物では、まず魔石はできないとのことであった。

 討伐の証として耳を切り取るという件に関しては、そもそも私たちは冒険者などではないのだから切り取る必要がない、と一蹴されることになる。


 ともあれ、二人は進行を再開した。


 その歩みは遅々としていたが、それは七之上だけに原因があるわけではなかった。

 と言うのは、ゴブリンを倒して以降、進路上に魔物の殺気立つ気配がよく感じられるようになったためである。


 大体の魔物はエリザベスの弓矢で気づかれることもなく屠ることができたが、たまに手に負えないほどの多数の集団とぶつかりそうになることがあったため、遠回りを余儀なくされたからでもあった。


 それでも、二人は確実に水場に向かって進んでいるのだ。


 エリザベスの優れた嗅覚によって、新鮮な水の匂いを察知しているためである。

 その後ろをついていく七之上は、息を切らせて死にそうな顔をして歩いているが、我慢しているためか、声を出さずに懸命に歩く。

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