第27話

 一体どこの誰が、ゴブリンの死体がつけている腰みのを装備したいと言うのか。

 いや、ゴブリンの履いていた腰みのでなくても、腰みのそのものをあまり履きたいとは、七之上は思わない。


「そうですか……なら、仕方がないですね」


 どことなく残念そうな表情をしたエリザベスは、腰みのから目を逸らしてゆっくりと立ち上がった。

 その様子から察するに、死体は放置していくらしい。


「あれ? 死体からは何も剥ぎ取ったりせんの?」


 怪訝そうな顔をしているエリザベスに、討伐した証として耳を切り取ったり、死体の胸を切り開いて魔石を回収したりしないのか、と七之上は言うのである。

 よくある冒険小説の知識であったが、この世界ではあまり役には立たないらしい。


 と言うのも、


「魔物の中に魔石はできませんよ」


 魔石とは魔力が結晶として固まったものである。

 体内に巡る魔力を使って、魔法を行使することが魔物の平常である。

 ゆえに、体内のどこかで魔力が固まって石になるようなことは、病気でもない限りはあり得ない、とエリザベスは言うのだ。

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