第26話

「ゴブリンですね。

 どれも無事に頭を射抜けていたようでなによりです」


「つーか、同族殺しになるんじゃね?

 いきなりヘビーな展開なんだけど大丈夫?」


 七之上がエリザベスを見るも、彼女はいたって平気そうな顔をしている。

 それどころか綺麗な笑みを浮かべて、


「私とこいつらは別種族みたいなものですから、何の問題もないですよ」


 と、有無を言わさぬような口調で言うものだから何も言い返すことができない。

 別の種族なら問題ないらしいと納得できたろうが『みたいなもの』ってなんぞや、と七之上は問いたくて仕方がなかったが、黙っていた。

 それ以上に首をつっこむと面倒ごとになりそうな予感がしたためである。

 そういった危機感知に関して七之上は優れており、引き際をきちんと心得ていた。


 そんな七之上を尻目に、エリザベスは倒したゴブリンの一体の側にしゃがみこみ、集中して観察している。

 なにやら真剣に思案をしているらしく、その表情は真面目そのものであった。


「マスター」


 と、深刻な顔をしてエリザベスは言った。


「腰みの、つけてみませんか?」


「つけないよ?」

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