第24話

「どうした?」


「ここから先は、慎重に行きます。

 魔物の殺気が、妙に濃いので」


 エリザベスが小声で何事かを呟くと、その手に緑色の光線が集まって、弓が速やかに組み上がっていく。

 張られた弦を大きく引くと、その中央に緑色に光る矢が生成されていく。


 エリザベスが矢を番えて指を離すと、光の矢はまっすぐに飛翔して虚空に消えた。

 間を置かず、エリザベスは幾度か矢を放つ。


 七之上の耳には聞いたことのない鳥や虫の鳴き声が小さく聞こえる程度で、殺気の有無など分かりはしない。

 だが、エリザベスが矢を放った後の姿勢を解いたことから、何らかの魔物を屠ったのだろう、と推測した。


「なんかいたのか?」


「恐らく。一応、確認しに行きますが」


 改めて抱えようとしたエリザベスに、七之上は慌てて言う。

 抱っこしてもらったままでは非効率であるし、簡単な靴でも作ってもらえれば自分で歩ける、と。


「なるほど、それもそうですね。両手が空くのは助かりますし」


 エリザベスは近くの大木に目を遣り、幾本かの蔦が絡まっているのを見て頷いた。

 手を横に振っただけで蔦を切り、何十メートルにもなる蔦をくるくる丸めて回収し、その内の一部を切り取って手早く蔦を編んでいく。


 出来上がったのは、簡単な履物だ。

 爪先と足の裏、かかとの部分を覆える程度の、楕円状の靴もどきである。

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