第23話

 こうした森の環境は人間の活動形態には合っておらず、自然、森という場所は魔物たちの縄張りになっていると思って良い。


 目も利かず、鼻も利かず、身体は重く沈んでいくように感じられ、何もせずとも気怠い眠気が襲ってくるのである。


「これは、すごいな……」


「森という領域は、人の住める環境ではないですからね。

 とはいえ、陽の光が射しこんでいる場所であるなら、その限りではありませんが」


 話しながら、エリザベスは足場の悪さを気にも留めずに駆けていく。

 露出している木の根や厚い落ち葉の層をできるだけ避け、生い茂る草木を風を生み出す魔法で切り倒しながら、ある程度の速度を維持して走る。

 体幹を揺らさずに安定させているその走りは、腕に抱えている七之上の体調を考慮してのものだろう。


「ゴブリンなのに、魔法なんて使えるんだな」


「なぜ私が魔物と呼ばれると思っているのです?

 魔法が使える動物だから、魔物と呼ばれているのですよ。

 極論を言えば、一部の人間も魔物です」


 言いつつ、不意にエリザベスは足を止めた。

 七之上をゆっくりと地面に降ろしながら、目を細めて進路先を見つめている。

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